生命の歴史
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Essay■ 2_151 オルドビス紀末の大絶滅 5:LIP
Letter■ LOME・帰省
Words ■ 北海道は涼しいです


(2017.08.17)
 オルドビス紀末の大絶滅の時期に、海洋堆積物の水銀を濃集させるよう現象が、3度にわたって起こったようです。その現象の原因として、巨大火成岩岩石区(LIP)というマグマの活動が考えられています。


Essay■ 2_151 オルドビス紀末の大絶滅 5:LIP

 堆積物の水銀濃度は、海水中の有機物と結びつくことで上昇する可能性がありました。ところが有機物との関係(Hg/TOC)をみると相関はなく、水銀だけが増加していることがわかりました。これは単純に水銀の増える現象があったことを示しています。その現象とは、いったいなんだったのでしょうか。
 水銀の増加があった時期には、巨大火成岩岩石区(Large Igneous Province、LIP)という大規模な火成活動が起こっていたという報告があり、この論文ではLIPが水銀の増加の原因としています。
 LIPとは、非常に巨大な規模での火成活動(火山活動や深成岩を形成するマグマ活動)のことです。大陸にいくつかあった巨大な火成活動の成因は、これまで個別に研究されてきました。洪水玄武岩と呼ばれるもので、現在ではLIPとされているものでした。
 洪水玄武岩で地上で最大のものは、アメリカ合衆国のワシントン州、オレゴン州、アイダホ州に広がっているコロンビア川台地(Columbia Plateau)と呼ばれるもので、中新世末期〜鮮新世初期にかけて、1000万から1500万年間、活動しました。シベリア台地玄武岩(Siberian Traps)は、ロシアの中央シベリア高原に広がって活動したもので、2億5100万年前のP-T境界頃に200万年以上にわたって続いたLIPです。デカントラップ(Deccan Traps)は、白亜紀末から古第三紀初の6800万年前〜6000万年前にかけて活動したものです。
 洪水玄武岩の活動は、大陸域だけでなく海洋域にいくつもあることが海洋底の調査かわわかってきてました。海台(plateau)とよばれる海底の大きな台地を形成しています。
 最大のものは、北西太平洋(日本の南東)にあるシャツキー海台(Shatsky Rise)です。シャツキー海台は、太陽系のなかで最大級とされ、地球上で最も大きな火山とされるタム山塊もあります。ジュラ紀後期〜白亜紀初期の間に形成されたと推定されています。太平洋のソロモン諸島の北にはオントンジャワ海台(Ontong Java Plateau)があり、1億2000万年前〜1億2500万年前に活動しました。ケルゲレン海台(Kerguelen Plateau)は、1億1000万年前から始まる一連の巨大火山噴火によって形成されました。ただし、ケルゲレン海台には、玄武岩中に木炭や片麻岩の礫岩片を含む地層がみつかっており、陸化して小大陸を形成していたと考えられています。白亜紀の中期には針葉樹林があり、2000万年前には海面下に沈んだと考えられています。
 洪水玄武岩に対してLIPという概念が導入され、マグマの成因を、統一的に考えるようになってきました。LIPは、マントル下部から暖かいマントルが巨大な上昇流の(スーパー)ホットプームが、マントルの下部と上部の境界あたりまで来て、そこからさらにいくつかの上昇流を形成することで火成作用が起こると考えられています。ホットプームによる火成活動は、大規模で長期にわたります。
 そのようなLIPの活動が、水銀の濃集している3つの時期に起こっていることになります。水銀は、LIPによる火山噴火によるものと推定します。マグマの多くはマントルで形成され、地表で噴火します。ですから、マントル由来の水銀が火山噴火で地表に飛び出したことになります。その水銀が、海洋にも過剰に供給され、有機物に依存することなく堆積物として取り込まれたことになります。
 水銀の濃集が、大洋を挟んだ離れた地域でも見つかったこと、LIPのような全地球的な現象であれば説明できます。


Letter■ LOME・帰省中

・LOME・
オルドビス紀末期の大絶滅は、
Late Ordovician mass extinctionを略して
LOMEという略号が論文では使われています。
このエッセイではLOMEというあまり馴染みがないのと、
LIPなどの略号も使うことになるので
今回は、使わないことにしました。

・帰省・
4日間ほど、横浜と京都に帰省していました。
連日30度を越える暑い日々で
皆はぐったりと疲れまてしまいました。
北海道に戻ってくると、20度ほどだったので
夜は熟睡できて少しずつ疲れが抜けてきました。
でも、体調をくずしてしまいました。