生命の歴史
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Essay■ 2_148 オルドビス紀末の大絶滅 2:絶滅と大絶滅
Letter■ 主観と歴史・前期終了
Words ■ 科学とは人が成すもの


(2017.07.27)
 絶滅と大絶滅との違いはどこにあるのでしょうか。基本的なことですが、大絶滅とは何かを見ていきましょう。大絶滅は何度ありますが、オルドビス紀末の大絶滅の位置づけを見ていきます。


Essay■ 2_148 オルドビス紀末の大絶滅 2:絶滅と大絶滅

 前回、生物種の出現の消失が、生存期間になるといいました。過去の生物は、化石の出現と消失を生存期間とみなしました。次の話題として、今回、話題にする、絶滅と大絶滅の違いです。
 実は、絶滅には、大絶滅との関係で、2つの意味を持つようになってきました。一つ種の消失という、前回説明したもともとの意味のものと、もうひとつ、大絶滅に比べて、種数は複数ですが規模が大きくない「小」絶滅を意味することがあります。大絶滅とは、それまでいた種が大量に絶滅することです。しかし、その際、何%以上の種が絶滅したら「大」というのかは、厳密な定義がありません。ただ多いという意味合いに使われています。ですから、「小」絶滅も、どの程度と定量的にいうことはできません。相対的、あるいは感覚的なものになります。
 地質時代を通じて、それまで生きていた種が、どの程度絶滅したかを数値化することはできます。その時代で消失した化石種の数を数え、全体の種数と比べれば、定量化できることになります。その数値をもとに、絶滅の規模をランキングすること可能で、上位の大絶滅を定義することができます。
 上位5位を、大絶滅の「ビック5」と呼んでいます。オルドビス紀末(O-S境界)、デボン紀後期(F-F境界)、ペルム紀末(P-T境界)、三畳紀末(T-J境界)、白亜紀末(K-Pg境界)の5つになります。
 生物の大絶滅で有名なのは、白亜紀と古第三紀の境界の事件ですが、この絶滅では、地上から恐竜がいなくなり、哺乳類が陸地のいい環境を支配して繁栄するという交代劇を起こした事件でした。K-Pg境界の絶滅は、規模が大きかったので「大絶滅」と呼ばれ、その全生物の絶滅率は、70%に達すると見積もられています。
 しかし、K-Pg境界の絶滅率は、実は「ビック5」の5番目となります。ペルム紀末のP-T境界が最大の大絶滅で、海棲生物では最大では96%が、全ての生物種で見ると90から95%の種が絶滅したと見積もられています。2番目がオルドビス紀末で全生物の85%で、デボン紀後期で82%、三畳紀末で76%、最後が白亜紀末となります。
 P-T境界の話は、このエッセイで何度か取り上げました。今回は、オルドビス紀末の大絶滅が話題です。
 オルドビス紀は、古生代のカンブリア紀の次の時代で、4億8540万年前から4億4340万年前の4200万年間の時代です。カンブリア紀からオルドビス紀にかけては、三葉虫のような節足動物、オウムガイに代表される腕足類が全盛期を迎えます。また、ウミリンゴ、筆石筆石のような半索動物、コノドントが繁栄しました。本格的なサンゴ礁が形成されるようになったことである。オルドビス紀後期には顎をある魚類が登場し、サンゴ類は床板サンゴ類や原始的な四射サンゴ類や層孔虫が繁栄して、礁性石灰岩が形成されるようになりました。オルドビス紀末には、それらの多くが絶滅しました。
 オルドビス紀には、大陸が南極域にあり、寒冷な時代で氷河に覆われたこともあります。氷床の形成と消滅による海水準の低下、上昇が2回起こったことがわかっています。しかし、これが大絶滅と同関係していたかはよくわかっていませんでした。そこに新しい説が出されました。その詳細は次回としましょう。


Letter■ 主観と歴史・前期終了

・主観と歴史・
科学とはいえ、人が行うものなので、
どうしても人間的な判断、主観が入ることがあります。
絶滅の規模も、大きいものであれば、
今回紹介したような手を使えば、順位付けから
客観性をもたせることができます。
ところが、中、小の規模の絶滅となると
どこに線を引くかは、主観的なものとなります。
絶滅率の数値で定義してもいいのですが、
それがどのような意味を持つかは不明です。
すべての時代境界で大絶滅あったわけでないことは、
デボン紀後期の大絶滅が
時代境界になっていないことからもわかります。
時代境界にも主観的な判断がはっています。
科学は人間が行い、そして進めてきました。
主観に他にも知的活動の歴史的経緯も刻まれています。
それが、現状でもあります。

・前期終了・
大学もいよいよ今週で講義が全て終わります。
その後は定期試験に入っていきます。
定期試験が終われば、待ちに待った夏休み
といいたいところですが、
教員は、いつものようにバタバタします。
定期テストのあと、採点と評価が必要になります。
今年は、私事で、お盆前に帰省することになりました。
横浜と京都です。
暑い時期に暑いところに行くのは少々気が重いですが、
まあ、やむおえないことなので行きます。
その前にすべての校務を終えなければなりません。