生命の歴史
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Essay■ 2_134 41億年前の生命 3:グラファイト
Letter■ 根雪?・卒業研究
Words ■ 師走は、やはり教師は忙しい


(2015.12.10)
 今回の報告に使われたジルコンは、選りすぐりの一粒でした。その当選確率1万分の1です。宝くじではないので、研究者は一粒ずつ吟味して、この一粒にたどり着いたのです。そこから得られた結果が今回の報告となっています。


Essay■ 2_134 41億年前の生命 3:グラファイト

 報告された生命の痕跡は、西オーストラリア、ジャックヒルの30.6億年前の堆積岩に含まれていたジルコンの砂粒からでした。もちろんこのジルコンは30.6億年前より古くなります。堆積岩を構成する砂粒ですから、すでにあった岩石が、浸食、運搬されてたまったものです。堆積岩の砕屑物が堆積岩の年代より古いのは、当たり前のことでもあります。ジャックヒルの堆積岩のジルコンの年代は、さまざまなものが見つかっています。そして、一番古い年代が44億年前で、地球最古の物質の記録フォルダーになっています。
 今回、生命の痕跡がみつかったジルコンを見つけるのに、大変な苦労があったことが、論文からうかがえます。ジャックヒルの堆積岩から取り出されたジルコンは、1万個を越える数になっているようです。多数のジルコンから、38億年前より古いものが5%ほどで、今回の研究対象になったのは、1個だけだったそうです。非常に貴重な試料だったのです。
 そのジルコンには、グラファイトとよばれる物質が包有物として取り込まれていました。グラファイトとは、石墨と呼ばれる鉱物で、炭素だけからできています。注意が必要です。なぜなら、ジルコンは、堆積岩から見つかったものです。その堆積岩には炭素物質が含まれていてもいいし、他の鉱物や岩石片からも由来してもいいし、堆積後の変形や変成作用の時に由来する可能性もあります。ですから、このグラファイトがジルコンができるときに取り込まれたことを確かめておかなければなりません。
 割れ目などから炭素物質が入り込むことないジルコンを選ばなければなりません。その包有物のうち、4%にダイヤモンドやグラファイトを含んでいるという報告があったのですが、その中には試料の処理中が汚染されたことがわかってきました。それを注意深く除く必要があります。今回はそのような危惧をなくすために、割れ目がないか注意深くチェックされています。そのようにして選ばれたのが、この一粒だったのです。
 ジャックヒルズの38億年前以前のジルコンには、多くの包有物が含まれており、それらは花崗岩から由来した可能性を示しています。ですから、今回注目されたジルコンも、その一つでした。このジルコンの年代が、41億年前だったのです。ジルコンの包有物であるグラファイトの化学分析をしたところ、生物の痕跡みつかったのです。
 その内容は、前回のエッセイで述べた複雑な履歴と関係があります。次回としましょう。


Letter■ 根雪?・卒業研究

・根雪?・
週末には大雪の予想がハズレました。
しかしあたり一面、白くはなりました。
週明けには、予報を補うほどではありませんが、
そこそこ降り、さらに積雪が増えました。
積雪量はそれほどではないのですが、
根雪になっていきそうな気配があります。
今年の冬は長くなるのでしょうか。

・卒業研究・
師走のこの頃になると、
卒業研究の添削に追われます。
私の学科は必修なので
学生も卒業がかかっているため大変でしょう。
しっかりの指導すれば、進んでいきます。
ひとりずつペースはばらばらですが、
自分なりの成果を上げていくので、
完成度は上っていきます。
来週が締め切りですので、あとひと頑張りです。
達成感を味わっていただければと思います。