地球の歴史
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Essay■ 2_121 最古の有性生殖 2:アワフキムシ
Letter■ 秘事・冬の到来
Words ■ 北国はもう冬です。


(2013.11.21)
 アワフキムシの交尾中の化石が見つかりました。最古の交尾化石としてニュースになりました。その化石を見つけるために、大量の化石が処理されました。その処理の中で、研究は深まっていきます。


Essay■ 2_121 最古の有性生殖 2:アワフキムシ

 前回、生物の生殖戦略として、無性生殖と有性生殖があるということを紹介しました。動物や植物などは有性生殖をし、単細胞生物の多くは無性生殖をします。いずれの生殖方法も、生物の生存戦略として成功しています。
 今回、紹介しているのは、昆虫で有性生殖している状態の化石が、みつかったというものでした。昆虫の種類は、アワフキムシというもので、現在もその子孫がいます。現在生きているアワフキムシの子孫の交尾姿勢は、化石の交尾状態と同じでした。非常によく保存された化石で、交尾器の状態まで詳しく観察することができました。
 これまで昆虫の交尾の確認されている化石が、33例あるそうです。その多くはコハクの中に閉じ込められたものです。昆虫の種類は、ホタルや蚊、ウンカ、ヨコバイ、アメンボ、ミツバチ、アリなどです。今回のアワフキムシの化石は、コハクではなく、火山灰の中から見つかっています。これが新しい特徴でもあります。
 北京の大学のドン・レン(Dong Ren)博士たちは、化石コレクションを用いて研究をしました。内モンゴルから発見された化石のコレクションで、20万個ほどの昆虫化石の標本のうち1200個以上のアワフキムシ標本がありました。それらを網羅的に研究しました。そして、今回の交尾中の化石が見つかったのです。
 交尾中の化石は、中国東北部の内モンゴル自治区に分布する1億6500万年前(中期ジュラ紀)に形成されたジューロンシャン層(Jiulongshan)から見つかりました。交尾中の化石としては、最古のものでした。
 ドン・レンらは、アワフキムシのオスとメス、200標本の交尾器を観察しています。大量の標本を調査したメリットとして、オスとメスの交尾器がよくわかった状態で、交尾の様子も検証できます。
 化石から、アワフキムシは、植物に停まりながらオスとメスが向かい合って、柔軟性のある腹部を合わせて交尾していたようです。そこに火山灰が激しく降ってきて、そのまま生き埋めになったようです。
 昆虫にとっては、やっとペアが見つかり交尾にいたった至福の瞬間に訪れた突然の死でした。子孫が残せるはずが、実現できずに、昆虫のペアにとっては、不幸であった違いありません。しかし、多数の標本を調べて、やっと交尾状態の標本を見つけた研究者にとっては、幸運であったはずです。「他人の不幸は蜜の味」なのでしょうか。


Letter■ 秘事・冬の到来

・秘事・
交尾の生物の営みとして重要な生態となります。
博物館の知り合いに、
ある種の昆虫の生態を調べているTa学芸員がいました。
彼は、昆虫の交尾中の瞬間が重要だといって
よく写真撮影をしていました。
形態の違ったオスとメスが交尾しているときは
同種だと判定できる重要な瞬間でもあります。
昆虫の雌雄や種区分の判定には、
解剖して、交尾器を出して顕微鏡で観察して研究していました。
生態や生物学的研究では、
交尾器が重要な役割をしています。
交尾は昆虫であろうと
秘事を覗くような淫靡な気配が漂います。
でも、研究は淡々と進めるべきでしょうね。

・冬の到来・
先週の大雪も一気に溶けました。
そして、雨となりました。
初雪としては、10月に札幌の山並みで見ており
例年どおりでしょうか。
急に寒くなったかと思うと、
すぐに暖かくなったりしました。
寒暖の変化の激しさが、
今年の天候の特徴でしょうか。
行きつ戻りつしながら、冬が訪れます。