生命の歴史
表紙に戻る


Essay■ 2_97 節足動物:眼の誕生 2
Letter■ カンブロパキコーペ・一気に秋・訂正
Words ■ 室戸の調査から帰って来ました。北海道は寒いです


(2011.09.22)
  化石として三葉虫は有名です。化石ショップでも三葉虫はたいてい置いてあります。ある時期には大量に生息していた生物でなのでしょう。三葉虫は節足動物の一種です。三葉虫の特徴が節足動物全般になるわけでありません。どこまでが三葉虫の特性で、どこまでが節足動物全般の特徴なのでしょうか。


Essay■ 2_97 節足動物:眼の誕生 2

 南オーストラリア州のエミュ・ベイは、保存のいい化石をふくむ地層「ラーゲルシュテッテン」として有名です。形成時代は、5億1700万年前で、澄江(5億2500万年前)より新しく、バージェス頁岩(5億0500万年前)より前の時代です。
  エミュ・ベイの地層から、保存のいい珍しい化石がみつかりました。南オーストラリア博物館のリーたちによって、2011年6月30日のNature誌に、この化石についての記載が報告されました。以下では、その報告に基づいて紹介していきます。
  発見された化石は、節足動物ですが、三葉虫でありません。三葉虫でないことが、今回の発見の重要な点です。澄江でもバージェス頁岩でも、三葉虫の保存のよい化石が見つかっています。三葉虫は1対の複眼を持っていて、眼の化石があります。しかし、古生代の初期(カンブリア紀からオルドビス紀ころ)で、生物で眼の化石が残っているのは、ほとんどが三葉虫なのです。
  生物の多様性や進化を考える場合には、いくつかの種の化石が必要です。ある器官(今回は眼)の形成を考える場合、そのような器官が他の種にあるのかどうかは非常に重要なものとなります。なぜなら、他の種で同様の器官が発達していないということは、ある種固有の特徴かもしれません。もし他の種でも、似た器官があるとすれば、あるグループの生物は、その器官を発達させる必然的な条件があった可能性があります。その必然性がわかれば、生物の進化に重要な情報となります。まして、今回の化石は、「カンブリアの大爆発」の時期の化石なのです。
  三葉虫以外の生物で目が判別できる化石は、カンブリア紀末期(4億3000万年前)のカンブロパキコーペ(Cambropachycope clarksoni)とよばれる生物です。今回の報告まで、カンブロパキコーペが最古のものでした。カンブロパキコーペは、スウェーデンから発見された一つ眼の奇妙な動物です。眼だけでなく姿形も奇妙な生物です。
  カンブロパキコーペの生きていた時代はカンブリア紀末期ですから、「カンブリアの大爆発」を考えるには、新しすぎます。もっと古いものが必要なのですが、三葉虫しかなったのです。
  今回の化石は、三葉虫以外の節足動物で最古の目の化石となります。この化石はバージェス頁岩より前の時代ですから、非常に重要な意味のあるものになります。
  目の化石は複眼で、3000個以上の個眼(複眼の中のひとつひとつの眼のこと)からなり、周辺部と中心部では大きさが異なる(機能も違う)非常の複雑なものとなっています。個眼の大きさも、カンブリア紀の三葉虫と比べても非常に大きくなっています。この複眼化石は、三葉虫のもの明らかに複雑で、現在の節足動物に匹敵するほどの機能、能力を持っていた可能性があります。もしかすると、眼は、カンブリア紀中期には、すでに現在の節足動物並みに一気に発達したのかもしれません。
  では、なぜ、眼が発達したのでしょう。その原因として「光スイッチ説」が有力です。それは次回としましょう。


Letter■ カンブロパキコーペ・一気に秋・訂正 

・カンブロパキコーペ・
一つ目の不思議な生物、
カンブロパキコーペの想像は、
http://cambrian-cafe.seesaa.net/article/153352172.html
にあります。
化石からの想像図ですから、
真の姿とは限りません。
化石では5つ目のオパビニアが有名で
クモは8つ目ですから
一つ目の生物も、
それほど驚くほどではないのかもしれません。
驚くべきは生物の多様性かもしれません。

・一気に秋・
先週末、室戸の調査から帰って来ました。
幸い、天気に恵まれて、
順調に調査をすることが出来ました。
ただ、北海道に帰ってきて、
急に冷え込んできました。
長袖だけでは寒く、上着を着なければならないほどです。
一気に秋が深くなったようです。
四国の炎天下を歩いた後の
北海道の寒さなので、
少々体調が変です。
連休が今週末もあるので、
ゆっくりとして体調を戻したいと考えています。
来週からはいよいよ大学の後期がスタートします。

・訂正・
前回「グリーンランドのシリウス・パセッ」
と表記しましたが、
「グリーンランドのシリウス・パセット」
の入力間違いでした。
申し訳ありませんでした。


表紙に戻る