生命の歴史
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Essay■ 2_80 酸素の誕生:酸素の物語6
Letter■ ハメリンプール・天候不順
Words ■ 人が、生物の最大の天敵かも


(2009.06.18)
  酸素を形成しはじめたのは、シアノバクテリアという小さな生物だと考えられています。絶滅したかに見えたストロマトライトをつくった生物は、現在も、入り江の奥に、ひっそりと人知れず、シアノバクテリアの子孫は生き延びていました。そのシアノバクテリアの発見から、20数億年前の酸素誕生の秘密が解明されてきました。


Essay■ 2_80 酸素の誕生:酸素の物語6

 縞状鉄鉱層の堆積とほぼ同時代に、ストロマトライトと呼ばれる不思議な岩石が見つかります。ストロマトライトは、数10cmから1mほどの直径をしたマッシュルームのような形をした岩石が連なっています。ひとつの地層の中にマッシュルームが並んでたっています。地層ですから隙間はなく、隙間があったであろうところは、ストロマトライトの破片などで満たされています。断面は、マッシュルールの外形に沿って、同心円状の縞模様になっています。
  かつては、ストロマトライトはどのようにして形成されたかはわからなからない、なぞの岩石だったのですが、現在も生きているストロマトライトが発見されました。西オーストラリアなどの、いくつかの海岸付近に細々とながら生きているのが発見されています。ですから、「生きているストロマトライト」と呼ばれることがあります。
  ストロマトライトは、シアノバクテリアが群生して作り上げた岩石です。その「生きているストロマトライト」(本当はシアノバクテリアが生きている)の研究から、光合成をしていることがわかってきました。
  ストロマトライトが、酸素を形成した生物の証拠、つまり「化石」となっています。狭い意味では、化石は生物の遺骸や体の一部をさしますが、広い意味では生物の生活した跡や棲家、足跡なども化石(生痕化石と呼ばれる)とされています。地質学では、化石という用語は、広義で使われています。ですから、ストロマトライトも立派な化石となります。
  ストロマトライトをつくったシアノバクテリアは、昼間、海の中で漂っているときは、水、太陽、海水中に溶け込んだ二酸化炭素がそろっているので、光合成をし、成長します。それ以外の条件、たとえば、干潮で水から上がったり、夜だったりすると、光合成はできません。干満と太陽の周期によって、酸素のできる、できないの周期性が生じます。
  シアノバクテリアが出す酸素は、酸素への対処ができていない生物(ミトコンドリアのような器官を持たない生物)にとって、猛毒となるものでした。なおかつ、酸素を利用できる生物は、エネルギー効率がよいために、他の生物を圧倒できる性能ももっていました。シアノバクテリアは、住みよい環境(太陽があたる穏やかな海岸沿い)を、酸素を武器に制覇していきました。その繁栄の名残が、ストロマトライトなのです。
  シアノバクテリアが水の中に漂い、活動的な環境(季節や水温など)が整うと、成長、増殖します。そのとき、回りに漂っている砂を自分の周りに粘液で付着させ、上に伸びよう、横に広がろうとします。この成長が、ストロマトライトに見られる縞模様として記録されていきます。ストロマトライトの縞模様は、一種の年輪のような成長の履歴と考えられます。
  ストロマトライトは、20数億年前ころには、大量に地層の中から見つかります。古いものでは、30億年前より以前からあると考えられます。ですから、30数億年前あたりから、シアノバクテリアは酸素を供給しはじめ、20数億前ころから大量に酸素を形成しはじめたことになります。
  シアノバクテリアは、生物ですので、季節変化、あるいは干満の変化の受けます。つまり、酸素の供給量に、季節や干満などの周期性が生じる可能性があります。これが、縞状鉄鉱層の縞模様を生む要因ではないかと考えられます。しかし、その周期のなぞは、まだ解明されていません。
  ここまで、赤色砂岩、縞状鉄鉱層、ストロマトライトは、すべて酸素形成の歴史を示していました。そして、それらから読み取れる酸素の形成のスタートは、20数億年前に収斂しています。最近、2つの酸素の形成時期に関する報告がありました。それを、次回紹介しましょう。


Letter■ ハメリンプール・天候不順 

・ハメリンプール・
ストロマトライトを形成するシアノバクテリアは、
西オーストラリアのインド洋側にある
シャーク湾の最奥部のハメリンプールという海岸に
ひっそっりと生きていました。
その理由は、シャーク湾が水深2mほどの遠浅であることと
亜熱帯で砂漠地帯なので海水の蒸発が激しいことで、
海水の塩分濃度が高く、
他の生物があまり住めない環境です。
そして、何より開発があまりされておらず
自然がそのまま残されています。
そのため、シアノバクテリアの天敵が
あまり住めない環境が、
保存されたのであろうと考えられます。
現在は、世界遺産に登録されて保護されています。

・天候不順・
北海道の6月は天候不順で、
曇りや雨の日が続いています。
北海道はイベントが目白押しですが、
YOSAKOIソーラン祭りも雨にたたられました。
小学校の運動会も小雨が降る天気でした。
天候が不順で、日照時間不足で、
農作物への影響も心配されます。
数日、寒い日がありましたが、
気温はそれほど低くないようです。
オホーツクに高気圧が
ドッシリと居座っているため、
その前面に当たる北海道が、
気圧の谷になって次々と低気圧が通り過ぎていきます。
そのせいで、悪い天気が続いているようです。


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