生命の歴史
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Essay■ 2_77 陸上への進出:酸素の物語3
Letter■ 環境の象徴・教育実習の指導
Words ■ 北海道に広いことを体感している


(2009.05.28)
  生物は、光合成によって酸素を生み出し、酸素を元にした体のシステムをつくりあげました。酸素が大気中に加わると、陸上進出のための環境も整いました。生物が陸上に進出までに、地球誕生から40億年という時間がかかったのです。これに要した時間は、長いのでしょうか、短いのでしょうか。


Essay■ 2_77 陸上への進出:酸素の物語3

 酸素は、現在の大部分の生物にとって、エネルギー・システムを維持すために、欠くことのできないものです。酸素を使ったエネルギー・システムとは、呼吸(厳密には好気呼吸と呼びます)という仕組みのことです。呼吸に使う酸素は、光合成をする生物が生み出しています。つまり、酸素は、現在の生物にとって非常に重要なものといえます。
  生物の進化を、酸素とのかかわりでみていくと、いくつか重要な出来事が見えてきます。酸素を生み出す仕組み(光合成)の誕生、酸素をエネルギー源とする仕組みの誕生、酸素が恵んでくれた快適な陸地の誕生が、重要な出来事といえるでしょう。
  時期の新しいものから見ていきましょう。まずは、生物の陸上への進出です。
  生物が陸上へ進出を可能になったのは、酸素のおかげです。酸素が大気中にあれば、太陽光の作用によってオゾンができ、大気中にオゾン層が形成されます。オゾン層が安定に大気中に存在し紫外線をほとんどさえぎるためには、酸素濃度が15〜20%程度必要です。最低でも2%ほどなければ、紫外線は防げません。
  オゾン層ができれば、有害な紫外線がなくなり、地表は生物にとって生存可能な領域となります。このような条件ができた時期は、推定されてはいますが、正確にわかっていません。
  生物が、水中から陸に上がるには、生物側の条件も整わなければなりません。それは、水中の浮力に頼ることなく陸上の重力に耐え、乾燥に耐える体と、大気の酸素を利用する呼吸の仕組み、栄養を大気や大地からやとる手段、子孫を水に依存することなく残せる仕組みなどです。生物側の仕組みが整い、環境も整ったときが、陸上への進出の時期となったはずです。
  化石の証拠に基づけば、陸上に進出したのは、シルル紀(4億4370万〜4億1600万年前)ころだと考えられています。
  水辺で大気中に体を出していた植物(シダ植物の仲間のリニア、クックソニア、ゾステロフィルムなど)が、シルル紀後期に見つかっています。マツバランは、原始的な葉のない維管束植物で、シルル紀末の地層からみつかっています。マツバランは、完全に水から独立した生活ができるようになっていました。
  動物では、ウミサソリの仲間で肺(書肺と呼ばれている)をもつものがあらわれ、シルル紀の中ごろにはサソリとして陸上に進出したと考えられます。
  シルル紀中ごろで、サソリが陸上生活をしていたことになります。これは、サソリの化石が、その時代に見つかっているということですが、実際にはもっと多くの種類、あるいはもっと以前に進出している可能性もあります。なぜなら、サソリという種が、単独で陸上への進出はできないからです。サソリが陸上で生きていくためには、住みかとして植物や、餌として昆虫やミミズのような小動物なども必要でだったはずです。
  このようにひとつの化石が見つかるということは、その化石が属していた生態系を考えると、他の種も、同時期には進出していたと推定されます。
  生物の陸上進出は、古生代のシルル紀ころでした。それは、地球誕生から40億年も経過していました。この長い時間は、生物が陸上に進出するには、そのほどの時間を要するものなのでしょうか。それとも、地球生物では、たまたまそれくらいの時間がかかっただけなのでしょうか。この答えは、地球では見つかりません。地球外の生物の例と比較対照しなければならないからです。


Letter■ 環境の象徴・教育実習の指導 

・環境の象徴・
化石とはたった1個でも見つかれば、
重要な情報を得られます。
ある化石が見つかれば、
形態や現在の生物との比較から、
生活様式が分かります。
たとえば、動物の歯の化石が見つかったとします。
歯の形態から、肉食動物と判定できました。
その食料となる草食生物が必要になります。
草食動物がいるということは、
植物があったということです。
植物が育つには、栄養となる土壌が必要です。
土壌をつくりには、有機物を分解する生物が必要となります。
このように、ある生物が住むためには
それなりの環境が必要となります。
その環境とは、生物がかかわって生み出されていくものです。
化石は、その環境を象徴していると捉えることもできます。

・教育実習の指導・
このメールが届くころには、
私は、教育実習の指導で網走にいます。
北海道は広いので、学生の指導に行くにも、
泊りがけとなります。
教育実習の学生が多くなると
手間も交通費もかかるので、
掛け持ちで何人かの学生のところを回ることになります。
しかし、日中の多くの時間が、
列車での移動時間となります。
札幌から網走まで、5時間以上かかります。
それでも教員の義務として、
実習指導へ行く必要があります。
幸い私のゼミの学生にはいませんでしたが
道外も担当者が回っています。


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