生命の歴史
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Essay■ 2_71 リューバの死因:マンモス2
Letter■ リューバの価値・師走
Words ■ 存在自体に価値がある


(2008.12.04)
  シベリアで見つかった氷漬けのマンモスの赤ちゃん「リューバ」の最新機器を使った分析が、日本で行われました。その分析からわかったことを、紹介しましょう。


Essay■ 2_71 リューバの死因:マンモス2

 2007年12月末に日本に届いたマンモスは、その直後から東京慈恵会医科大学の高次元医用画像工学研究所で、CTスキャンによるの分析が進めらました。それと呼応して、読売新聞社、東京慈恵会医科大学および科学技術館の共催で「奇跡のマンモス「リューバ」〜3万7000年の時を越えて〜」緊急企画展が、2008年1月2日から2月3日まで行われました。私はその展示を見ていないので、ホームページで当時の様子を伺うしかありません。
  ところで、のCTスキャンによるの分析に当たられた東京慈恵医大の鈴木直樹教授でした。鈴木さんは、先端医療画像の技術を開発をおこなわれている研究者で、脊椎動物、特にマンモスの画像解析で多くの実績をあげておられます。「愛・地球博」でも、マンモスの展示指導や学術研究の委員長をなされていました。私は、「愛・地球博」にも残念ながら私はいったことがなく、同時期に開催された北海道大学博物館でのマンモスの冷凍「お尻」を見学しただけです。
  鈴木さんたちは、2008年の4月には研究の途中段階の成果を公開しました。それによると、マンモスの赤ちゃん「リューバ」が死んだときの様子がかなりはっきりわかってきたようです。その成果を紹介しましょう。
  リューバは、生後3から4カ月の雌の赤ちゃんマンモスでした。死ぬまでは、外傷や病気の跡がないことから健康に育っていたことがわかりました。ところが、彼女は、湖か川で溺れて死にました。それは、鼻や口、消化管から泥が出てきたこと、腸に食べたものがそのままのこっていること、などからわかります。
  リューバが溺れた死んだ泥の中は、酸素が少ない条件であったため、皮や毛、尻尾も腐ることなく、非常によい保存状態に置かれることになったのです。その後、リューバは、永久凍土として氷漬けになりました。
  鈴木さんたちのCTスキャンで、氷漬けのマンモスを切り刻むことなく、そのままの状態で、内部を調べることができます。心臓や肝臓などの内臓や、筋肉、骨などをCGによって立体画像として再現されていきました。
  その後、リューバは、サンクトペテルブルグの動物学博物館に移送され、筋繊維および骨の研究が行われる予定です。また、新しいことが、いろいろとわかってくることでしょう。
  さて、リューバは泥沼からはい上がれずに溺れ死にました。リューバは赤ちゃんであっため溺れたのでしょう。他のマンモスたちが、同じような死に方をしたわけではありません。しかし、何らかの共通の原因で多くのマンモスは死に、やがてすべてのマンモスは地上から消え去りました。つまり、絶滅です。では、なぜ、マンモスは絶滅したのでしょうか。マンモス絶滅について、次回は考えていきましょう。


Letter■ リューバの価値・師走 

・リューバの価値・
ロシア科学アカデミー動物学研究所の
アレクセイ・チホノフ副所長はリューバに強い関心を寄せています。
「古代のウイルスが保存されている可能性」を考えています。
しかし、マンモスの生きていた時代は、
それほど過去ではありません。
ですから、ウイルスが見つかったとしても、
生物の進化に関わるような情報はなかなか得られないでしょう。
また、シベリアが氷河期にどのような状態であったのかを
「腸内の花粉や胞子などから探ることができるかもしれない」
といっていますが、これも、わざわざマンモスを使わなくても
泥を調べればいいことです。
リューバは、その体自体に意味があると思います。
今はいない生物の肉体として、存在自体に価値があるのです。
その価値を引き出すのは、科学者たちです。
私は、それに期待しています。

・師走・
いよいよ師走です。
大学の推薦入試も終わりました。
現在採点集計中です。
大学では、来春四月以降のための準備が始まったわけです。
まだ、後期の講義がだいぶ残っています。
気を抜くことはできません。
しかし、忘年会が次々とあり、
持ちつき大会が小学校ではあります。
こんな年中行事があると、心もそわそわし始めます。
師走とはそんな季節なのでしょう。

 


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