生命の歴史
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Essay■ 2_64 オスとメス5:雌雄の証拠
Letter■ 男女関係の苦労・考えきれないこと
Words ■ 男と女の関係は難しい


(2008.02.07)
  このシリーズでは、生物のオスとメスという戦略について考えてきました。シリーズの最後に、オスとメスがいつ誕生したのかをみていきましょう。


Essay■ 2_64 オスとメス5:雌雄の証拠

 生物は、35億年前には誕生したことは確かな証拠があります。その後しばらく、単細胞の原核生物だけで、無性生殖をするだけだったと考えられます。最古の生物も、単細胞生物のような証拠も、化石から決定されたものです。単細胞の原核生物が固い殻や骨のような化石に残るものを持っているわけではありません。形態の痕跡が、炭素やその化合物として残されているだけです。それでも、細胞も大きさ、形や細胞分裂している様子などから、その痕跡が生物であったことがわかります。
  現在の生物でみると、はっきりとした雌雄を持っているのは、DNAを核という袋に入っている真核生物だけです。真核生物は、原核生物より複雑な構造をしていますから、35億年前よりもっとあとになって誕生したはずです。
  真核生物は15〜20億年前に誕生したと考えられています。では、真核生物が、いつごろから雌雄という機能を持つようになったのでしょうか。
  有性生殖のはじまりとしては、異型配偶子接合、つまり減数分裂をともなう有性生殖を行うです。
  植物の化石で見つかるのは、珪藻類があります。珪藻類は異型配偶子接合を行うもので、約12億年前ものが最古です。植物では、花粉(花粉は化石に残りやすい)や花、実などが化石として見つかれば、雌雄の存在が比較的簡単に見分けられます。
  一方、動物では、そうはいきません。多細胞動物の化石が、10億年前以降から見つかりますが、オス・メスは、そうたやすく判別できません。顕生代のはじまりカンブリア紀の直前(約6億年前)のエディアカラ動物群では、減数分裂を行っていたと考えられますが、化石としては判別できません。
  動物のオス・メスの差異を化石から見つけなければならないのですが、化石から雌雄を決めるのは、なかなか困難なのです。それは、生殖器が化石になりにくいからです。多数ある動物の化石でも、オス・メスが確実に決められているのは、案外少ないのです。
  化石として雌雄がはっきりと確認されているのは、私が知っている限りでは、古生代後半、3億年前のミジンコの化石が最古のものです。最近でも、骨の形からカマラサウルスという大型の植物食恐竜の雌雄の判定法を見つけたとして、論文が書かれるほどです。
  オスとメスは、我々人間では当たり前に存在するものに見えるのですが、実は、なかなか複雑で謎めいた存在なのですね。


Letter■ 落ち着かない季節・麻疹 

・男女関係の苦労・
オスとメス、人間でいえば、男と女ですが、
その関係は複雑なものです。
人間関係ですから、個人と個人の関係に基づいているはずなのですが、
同性同士には見られない、別の関係が生じます。
男女関係の中には、当然、
遺伝子の命ずる生殖への動機(本能と呼ばれる)が含まれています。
なにも人間だけが、この関係に悩んでいるわけではありません。
節足動物、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類など他の生物も
男女関係では苦労しています。
その関係で、生死をもかけて戦われることもよくあります。
雌雄の誕生は、苦労の誕生でもあるのでしょうか。
それとも生きる自体に、苦労が伴うのでしょうか。

・考えきれないこと・
私立大学は、入試のシーズンです。
我が大学も、今日から入試です。
少子化のため、どの大学も生き残りをかけて、
さまざまな対策を練っています。
少しでも、受験生にアピールをしようといろいろな手を打っています。
教員も当然それに参画し、協力しなければなりませんが、
教員の一番努力すべきことは、
いい教育、つまりいい講義の提供ではないでしょうか。
いい講義とは、学生の望む内容を提供しながら、
それを打ち砕き、より上を目指すものでなくてはなりません。
ただ単に学生の望むものを提供するだけでは、
教員の妥協や手抜きに過ぎません。
ですから、毎年同じ講義名であっても、
内容や提供手法は、いつも試行錯誤しながら
改良していくことになります。
教員として、それは当たり前のことなのですが、
それでも毎年考えさせられます。
特に今の時期は我が大学では、
来年度の講義のシラバスを提出する時期となります。
いろいろ悩みながら考えながら、
でも、最後は締切りに追われて、
これでいいのかと迷いながらも決断してしまいます。


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