生命の歴史
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Essay■ 2_44 生物の分類3:種とは
Letter■ 登別へ・歌での結びつき
Words ■ いよいよ3月も終わり 


(2006.03.30)
 生物の分類を考えています。今回は、分類の一番基本となる種(しゅ)の概念についてみていきましょう。


Essay 2_44 生物の分類3:種とは

 前回までのエッセイで、生物の分類は、2界からスタートして、5界分類になり、その後3ドメインへと変化してきたことを示しました。現在、一番一般的な分類は、動物界、植物界、モネラ界、原生生物界、真菌類という5つの界によるものです。そして、現在は、この界に基づいて、生物は分類されています。
 生物の分類のいちばんの基本になるのは、「種(しゅ)」という考えです。しかし、この種とは、実はなかなか難しい概念なのです。種の概念とは、分かりやすくいえば、同じ種(同種)と違う種(別種)とを、どう区別するかということです。
 種なんて、一見たやすいことことだと思えそうですが、多くの生物を見つけて、分類していくと、すべてに適応できる種の考えとは、実はなかなか難しいものであることが分かってきました。
 現在、マイヤーが1942年に提案した考えが、一般な種の考え方です(生物学的種と呼ばれています)。それは、自然の状態で、同じ地域で生きているもので、交配して子孫を残しているものを同種とみなすという考え方です。同地域に分布しても、交配しないで、子孫を残さないものは、異なる種と考えられています。
 かつて、種は形(形態)によって区分されていました(形態的種)。オスとメスでは形が違うことがありますが、オス同士やメス同士では形が違えば、別種と考えられました。しかし、形の違いと種の違いに、因果関係があるかどうかは不明です。つまり、種の差異がどのような形態に反映してしているのか、その根拠はあいまいでした。それに形態を区別するのに主観が入りやすいことも問題でした。
 現在では、そのようなあいまいさをなくすために、昆虫などでは生殖器、特に交接器の構造を用いて区別されています。このような種の存続にかかわるような特殊な器官を用いれば、比較的主観の入りにくい形態比較として有効な手段となっています。
 生殖器は動物などの複雑な体制をもつ生物に対して利用できるものです。それに、形態による分類では、見かけに大きな違いが生じる種では、適用が難しくなります。あるいはオスとメスがいる生き物で有性生殖するような生物でのみ使えるものです。
 有性生殖とは、生殖のための器官や細胞が、もう一つの生物と接合をして、生じた接合子から、新しい子孫ができるような方法です。動物の卵と精子による受精は、その典型的なものです。
 また、生物には無性生殖で増える生物がいます。無性生殖とは、ひとつの生き物が、他との生き物のなんのやりとりなしで、子孫を残す方法です。単独でも、発生(孵化、発芽)ができるものです。
 有性生殖をする生物でも、実際に交配を確認できるとは、限りません。ですから、マイヤーの種は、概念としてはわかるのですが、実際に適用するのはなかなか困難となります。
 単純に、自然の状態で生活している場が分かれていることを、種の重要な基準にする方法もあります。実験的には交雑可能であっても、自然状態で交配の可能性がなく、別の集団として分かれていれば、別種とみなす考えたかです。このような考えかたは生態学的種と呼ばれています。
 他にも、種の考え方には、進化の系統を考えたり、DNAの核酸塩基配列の類似性を基準にすることなどもあります。いずれにしても、種の概念は定義できても、すべての生物にその概念を適用することはなかなか困難なことのようです。
 しかし、生物は、そんな人間の思惑に煩わされることなく、今日も子孫を残しています。


Letter■ 登別へ・歌での結びつき 

・登別へ・
3月の26日から28日まで、登別に出かけていました。
私は、登別の火山を調べることでしたが、
家族は、温泉と登別にある水族館がお目当てでした。
私の調査のほうは、雪で思うようにできませんでしたが、
家族の方は大満足であったようです。
調査の様子は、別の機会に紹介します。

・歌での結びつき・
先週の金曜日に卒業式が終わりました。
わが大学では1000名以上も卒業生がいますので、
大学では、人数が多すぎて卒業式ができず、
札幌市内で大きなホールを借りての式でした。
卒業生の全員の名前を呼び上げて、卒業式が始まりました。
そのせいもあって、祝典がすべて終わるのに、2時間以上かかりました。
しかし、参列されている親御さんたちは、
自分の子供の名前が呼ばれるのは、うれしいことに違いありません。
私も何人も知っている名前をきき、考え深いものがありました。
高校までは、校歌を歌う機会があり、覚えることがありましたが、
大学では、卒業式と入学式くらいしか、聞く機会がありません。
しかし、私の卒業した大学は、
その当時まだバンカラの気風が残っていましたので、
校歌や寮歌を歌う機会があり、今でもまだ覚えています。
幸いなことなのでしょうか。
知らないOBや後輩が歌で結びつくこともあります。
しかし、現在の大学で、歌での結びつきというのは
希薄になっているのかもしれませんね。


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