生命の歴史
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Essay■ 2_38 進化論の進化1:進化しているということ
Letter■ 成績・共通祖先
Words ■ 生物は進化している。では、私は? 


(2005年7月14日)
 生物の進化だけでなく、時間と共に変化していくことに対して、進化という言葉が広く使われています。例えば、コンピュータの進化、携帯電話の進化、宇宙の進化、地球の進化、などなど。ここでは、生物の進化について見てきます。


Essay 2_38 進化論の進化1:進化しているということ

 現在、生きている生物は、その祖先から進化してきました。しかし、進化とはいったいどういうことでしょうか。本当に進化は起こっているのでしょうか。そんな素朴な疑問を考えてみます。
 進化とは、長い時間がかかって、祖先とはまったく違った種類の生物に変わってしまうことです。祖先が今も生きていることもありますし、祖先はいなくなっている場合もあります。そんな進化ですが、生物の歴史を見ていきますと、進化には、スケールの違いによって、2つのものがあります。種分化(小進化とも呼ばれます)と大進化の2つです。
 種分化(小進化)とは、生物が時間とともに変化していき、最終的に異なった種類の生物になることです。上で述べた意味をそのまま反映している変化です。これは、新しい種が誕生することを意味しています。
 一方、大進化とは、種分化と比べて、生物のより大きな変化をいいます。脊椎動物でいえば、魚類から両生類、爬虫類、哺乳類へと変わるようなものを大進化といいます。生物の分類体系でも大きな、界、門、綱、目などが変化することを大進化と呼んでいます。
 上で述べた例で、動物は界という分類で、脊椎動物とは門で、魚類から両生類、爬虫類、哺乳類は綱の変化で、体の基本的な構造に違いによって区分されています。
 2つの種分化と大進化は、現在では、根本的に違うものではないとされています。つまり少しの変化(種分化)の積み重ねが、大きな変化(大進化)つくるということです。
 今まで生物が進化していることを前提として話してきましたが、ところで、本当に生物は進化しているのでしょうか。もし進化しているのなら、その証拠は何でしょうか。
 現在、進化の証として、化石、現生生物の分布と相、分子進化学的な証拠などが挙げられています。
 化石の証拠とは、まず、化石を過去の生物とみなすことからはじまります。そして、いろいろな時代の多数の化石を集めて、過去の生物がどう変化してきたかをみよう、という考え方です。しかし、これは、化石を多数集めて、進化という連続をみようという考えです。化石という点を多数集めて進化という線とみなしていきます。実際の化石は、必ずしもすべて連続していないのですが、過去の生物から現在の生物に至るまでの道筋の概略を表しており、進化とみなしています。過去の証拠から進化を探る方法であります。
 生物が現在の地理的な分布や、生物の組み合わせ(生物相といいます)が、そうなっている理由を説明するには、生物が種分化してきた、つまり進化してきたという考えを取り入れなければ説明できないことがあります。これは、現生生物の種分化を、マクロ的な視点でみるアプローチであります。
 分子進化学的な証拠とは、現生生物をミクロ的な視点で見て調べる方法です。細胞や生物関連分子などを調べていくと、そこには進化の痕跡や証拠が見つかるということです。
 以上のような進化の証拠が挙げられていますが、いずれも進化があったということを論理的に、証明しているわけではありません。ですから、進化の考え方には、いろいろな解釈がありえますし、実際にいろいろな進化論があります。しかし、多くの生物学者は、進化があったと信じています。
 もうひとつ、進化の考えには、最初の生物が一つのものから始まったという前提があります。これも実はなかなか難しい問題です。
 生物が生まれ、進化しているという考えは良しとしても、ひとつの生物から進化がスタートしたという保障はありません。
 多数の多様な生物が誕生して、いろいろな種が生まれ、いろいろな進化があってもいいはずです。地球初期の生命誕生の様子を想像すると、多様な生物が生まれ、多様な生物から、多様な進化が起こった、と考えた方が、ありえそうです。
 しかし、現在の生物は、ひとつの種からすべての生物が進化してきたと考えています。そのような最初の生命をコモノートと呼んでいます。もちろんコモノートは、ひとつの考え方、仮説で、そのような生物は見つかっているわけではありません。
 コモノートには、根拠があります。それは、生きている生物には、いろいろな生命活動の方法が可能なのに、共通の仕組みを持つことがわかっているからです。その代表的なものは、セントラル・ドグマ(中心狭義とも呼ばれます)というものです。セントラル・ドグマとは、遺伝情報がDNAに蓄えられ、RNAを使って遺伝情報が運ばれ、タンパク質を合成するというメカニズムです。この方法をすべての生物が用いているのです。いろいろな方法がありうるはずなのに、ひとつの方法しか使っていなのは、一つの祖先コモノートがあり、その祖先はたまたまこの方法を選んだということになります。


Letter■ 成績・共通祖先 

・成績・
6月、北海道は暑く、雨がほとんど降りませんでした。
7月になり、北海道にはやっと雨らしい雨が降りました。
そして6月下旬の暑さが嘘のように、
爽快に日々が続いています。
7月ともなれば、大学の学生たちは、
そろそろ試験を見据えた行動をしています。
授業で試験に関する内容が述べられないか、
何とか単位をうまくとる方法がないか
などをあの手この手で模索しています。
教員も、定期テストの準備と成績をつけるために
レポートや出席の整理に追われ始めます。
わが大学の出席は完全にデジタル化しされています。
学生証をカードリーダに通すことによって
出席を取れます。
コンピュータに翌日には集計されて
教員と本人には出席情報は閲覧できます。
ですから、自分が現在何回出席しているのかは
簡単に知ることができます。
しかし、レポートの評価や入力、テストの採点は
やはり、教員が自力しなければなりません。
1400名分の処理が必要となります。
こればかりは、何度やっても気が重いものです。

・共通祖先・
生物の進化について、最近、考えています。
もちろん生物学者ではないので、
地質学者としても立場で考えています。
古生物学も専門が違っていますが
地質学と近い分野なので理解できます。
生物の進化を地質学的に考えていくことは
なかなか面白いテーマでもあります。
今回エッセイで紹介したコモノートは、
エッセイのような内容では、
正確には共通祖先という言葉を使うべきです。
ですが、私がいつも用いているコモノートを使いました。
コモノートとは、東京薬科大学生命科学部の山岸明彦さんが
提唱された考え方です。
「遺伝的仕組みが成立し、環状ゲノムを有していた」生物で、
共通祖先を想定して使われました。
共通祖先に関する呼び方には、他にも、
プロゲノート(遺伝子型と表現型の対応していない生物 )
センアンセスター(曖昧な共通祖先を意味する概念的な生物)
などがあります。
実際のコモノートは化石ではわかりませんが、
現生生物の研究から、
好熱菌で、ゲノムサイズは小さく、遺伝子数は少ない
生物だと考えられています。
さて、いつの日にかコモノートにたどり着けるのでしょうか。
それとも、今は亡き、幻の生物のなのでしょうか。


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