生命の歴史
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Essay■ 2_36 絶滅の周期:進化2
Letter■ 雨の周期性・歴史科学
Words ■ 繰り返すのか繰り返さないのか、そこが問題だ 


(2005年6月23日)
 少し前ですが、ネイチャーという雑誌に生物の絶滅に関して面白い論文がありました。絶滅が周期的に起きているという報告です。今回は、絶滅の周期性について紹介しましょう。


Essay 2_36 絶滅の周期:進化2

 前回のエッセイで、生物に進化が起こっていることは確かだが、進化の仕組みや、進化がなぜ起こるのかは、よくわかっていないという話をしました。今回は、進化ではなく、進化とも密接に関係がある絶滅についてです。
 地球の歴史を見ていくと、生物の大絶滅が何度もあったのですが、その大絶滅が、なぜ、どのように起こったのかも、進化同様、よくわかっていません。進化のメカニズムがわからないのだから当然ともいえますが、絶滅が生物自身に起因するのであれば、進化と同じように解明できません。しかし、自然環境の変化などの外因で、絶滅が起こるのであれば、大絶滅などの大きな異変は、地球環境に大きな変化を与えたような大事件となります。そのような地球における大事件は、どこかに記録されているかもしれません。その事件の詳細がわかれば、もしかしたら大絶滅のメカニズムが解明できるかもしれません。
 白亜紀末の隕石の衝突の事件があり、地球環境に劇的変化が起こりました。その環境変化がきっかけで、大絶滅が起こったと考えられています。大絶滅の原因が隕石の衝突であるというのは突き止められたのですが、衝突の事件から、どのような連鎖が起きて、多くの種や属にいたる生物種が大量に絶滅したのか、そのプロセスはまだよくわかっていません。
 すべての生物が絶滅したのなら、まだ話は簡単であったのです。なぜなら地球生物がすべて絶滅するほどの大きな環境変化、例えば大気や海洋がすべてなくなるような大事件、が起こればいいのです。ところが、いくつもの生物が生き延びたのです。生き延びた種が、次の時代に新たに進化をして、生物の多様性をつくっていったのです。
 なぜ、それらの生物が生き延びたのでしょうか。もし偶然なら、進化は偶然が大きく作用していることになります。進化が偶然か必然化は、重大な問題ですが、解決されていません。
 白亜紀の末の大絶滅は、原因が突き止められただけでも、上出来というべきでしょう。他の時代に起こった大絶滅は、原因がまだよくわかっていなのですから。
 ロードとミュラーがネイチャーという科学雑誌の2005年3月10日号に論文を報告しました。彼らは、既存の化石のデータベースをもとに、統計的な処理をして、絶滅には周期性があることを見つけ出しました。大絶滅には6200万年と1億4000万年周期の周期性があるという内容です。そして、6200万年の周期が強くあわられているというのです。
 アメリカン・サイエンティストの7−8月号で、ヘイズもその論文に関連する議論しています。新しい年代区分に基づく補正や各種の統計的手法について詳細に検討しています。そして、同様の周期を見出しています。処理方法によっては、1億4000万年の周期の方が強くなることを示しました。
 生物の絶滅の周期性の研究は、ロードとミュラーの研究が最初ではなく、何人かの研究者が周期性を見つけて、すでに報告しています。6200万年の周期は1970年代にすでにトムソンが唱えています。フィッシャーとアーサーは3200万年周期を、ロープとセプコスキーは2600万年周期を、それぞれ提唱していました。そして、今回再度6200万年周期と1億4000万年周期が提示されたのです。
 6200万年という周期は長いものです。ロードとミュラーは、生物たち自身が生み出す周期としては、長すぎると考えました。つまり、この絶滅の周期は、生物学的な原因ではなく、生物以外の要因を考えるべきだとしました。
 彼らは、物理学者なので天文学的原因をたくさん挙げていますが、7つの可能性を考えました。太陽系が銀河の分子雲のなかを通り抜ける1億4000万年の周期、マントル・プルームの周期、太陽系が銀河系の回転面を横切る7400万から5200万年の周期、まだ見つかっていない太陽の長い周期の変化が気候に影響を与える周期、地球軌道の周期性が引き起こす気候変動、彗星の周期的衝突、未知の惑星Xがカイパーベルトを刺激して彗星のシャワーを起こす、などが考えられています。これらはきちんと議論された原因の候補ではありません。彼らの上げた可能性に過ぎません。
 原因を探る前に、この周期性が何を意味するのかを考えなければならないようです。白亜紀の終わりの大絶滅が隕石の衝突で、他の大絶滅では隕石の衝突の証拠は明らかではありません。となる、大絶滅が少なくとも隕石衝突とそうでないものがあるわけです。違う原因で起こった大絶滅が、なぜ周期性ができるのでしょうか。よくわかりません。まだまだ謎は解けそうにもありませんね。


Letter■ 雨の周期性・歴史科学 

・雨の周期性・
本州は梅雨の真っ最中でしょうか。
それとも暑い夏のような日でしょうか。
北海道は、爽快な日が続いています。
1年で一番いい季節でもあります。
祭りや外での行事が、この時期にいろいろおこなわれます。
ただ困るのは、最近は平日が快晴でいいのですが、
週末が雨の周期で変わっていくことです。
休日の外での行事の予定が流れたり、
変更したりすることがあります。
子供たちの行事は一通り終わったので、
天気に気をもむことはなくなりました。
でも、天気によって、出かけるか出かけないかの
我が家の予定も変わってきます。
できれば、外でいろいろしたいことがあるのですが、
天気ばかりは、ままならないものです。

・歴史科学・
結果から原因を探ることは、実はなかなか難しいものです。
物理現象は化学反応のように、再現可能な現象なら
その解明はまだ可能でしょう。
しかし、地球の歴史や生物進化は、
一度限りのことで、再度繰り返すことがありません。
歴史の科学は、なかなか厄介なものです。
ある出来事(結果)があったとき、その原因とされたものが、
本当かどうかは、どうしたら確かめることができるでしょうか。
論理的には、できません。
従って、研究者は、その原因とする仮説が
もっともらしいかどうかを競うことになります。
証拠や情報をできるだけ集めて、
原因とされる仮説をもっともらしくすることで、
とりあえずの決着を見ることになるのでしょう。
歴史科学は、再現不可能なところがつらいところです。
でも、そこが歴史科学の面白さでもあるのでしょうが。


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