生命の歴史
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Essay■ 2_23 生命誕生の必然性
Letter■ 生命のたくましさをたどるシリーズ・日本のKT境界
Words ■ シリーズはいつも突然に


2003年11月20日)
 生物は、地球環境の影響を敏感に受けます。そして弱いものは滅び、強いもの、適応性のあるだけが生き延びます。そして生き延びた生物は、ライバルのいなくなった環境で、勢力を広げていきます。生物とはたくましいものです。そんな生物のたくましさをみてきましょう。


Essay

 まず、生物誕生の時から話を始めましょう。生命の誕生は、地球誕生のころに遡ります。地球の誕生のころといっても、海が地球にできるようなころの話です。海がいつできたかは、定かではありません。しかし、約38億年前、地球が誕生して、7、8億年後には、りっぱな海がありました。りっぱというのは、広くひろがる今のような海のという意味です。
 そんな海が、生命誕生の場となります。なぜ、誕生の場が海なのかという疑問がわきます。可能性として、生命は大気や陸などでも誕生するかもしれません。しかし、現在生きている生命の多くは、海と切っても切れない関係があります。細胞の大部分は水からできてます。また、太古の生物は水の中に住んでいたものばかりです。ですから、水の中で誕生するというストーリーが考えられています。
 もちろんこれは、私たちが知っているのは地球の生物だけだから、水との関係が強いのかもしれません。もっと他の誕生の場があってもいいかもしれません。でも、私たちは、地球の生命以外の生物は知らないのです。いろいろな生物の誕生の可能性が考えられたとしても、地球外生命を見つけない限り、実証する手立てはありません。ですから、現状では、仮説にとどまります。生命の誕生については、地球生命で考えるしか選択しかなさそうです。
 では、水のある星なら、あるいは水があれば、すぐに生命は誕生できるのでしょうか。それとも偶然にしか誕生しないのでしょうか。もし、偶然だとすると地球生命は非常に特殊なものとなります。地球外生命を探すなどということも無駄になってしまうかもしれません。
 その答えはまだ見つかっていません。しかし、見つかる可能性があります。もし、水ができてすぐに生命が誕生したという証拠があれば、生命とは結構簡単に誕生できるという可能性がでてきます。つまり、最古の海の証拠から生物の化石あるいは生物の痕跡を見つければ、海の誕生と生命誕生の必然性の関係が大きくなります。
 地質学者は、最古の堆積岩を手がかりにして、最古の生物化石探しを続けています。その結果については、次回紹介しましょう。


Letter■ 生命のたくましさをたどるシリーズ・日本のKT境界

・生命のたくましさをたどるシリーズ・
生命は、ひとつひとつを取り上げてみていくと、
ちょっとした環境の変化が起こると死んでしまいます。
そういう点では、生き物とは、か弱い存在であります。
しかし、生命全体としてみると、なかなかタフな存在となります。
つまり、生命を個々の生き物としてではなく、
生物全体として考えるということです。
地球上でどのような環境の変化が起こっても、
生命は耐え抜いて生きてきました。
それどころか、生命はそんな逆境を生き延びるために会得した新たな能力を、
今度は、自分たちが生きていくときに
すごく有利な能力へと転用していきました。
そんな生命のたくましい生き方をシリーズとしてたどっていきましょう。

・日本のKT境界・
前に海岸のKT境界を取り上げたことがあります。
その内容に対して、Kojさんから、
日本にはKT境界がないのという質問を受けました。
それに対して、私は次のようなメールを出しました。

「KT境界は日本にはないのかという質問についてです。
結論からいうと、あります。
まず、KT境界がみつかるには、いくつの条件をクリアしなければなりません。
白亜紀と次の時代の新第三紀の地層が
連続的にたまるような環境がなければなりません。
さらに、境界部の地層が、地下にあってはだめで、
現在の陸地の地表になければなりません。
海でたまったものがたまたまでいいですが、
現在、陸上になければなりません。
境界部が人間に見えるようにがけになっていなければなりません。
つまり、地表に露出していなければなりません。
さらに、その境界を地質学者が調べ、
KT境界であると認定しなければなりません。
そんな条件を満たしたところだけが、KT境界となります。
白亜紀の地層は日本にもあります。第三紀の地層もあります。
しかし、その境界が認定されているのは、私が知っている限り、
一箇所、北海道で見つかっているものだけです。
ほかのところでも見つかっているかもしれませんが、
私はその後の研究をフォローしていません。
北海道の境界についても、私は、昔、論文で見たものなので、うろ覚えです。
でも、写真が記憶に残っています。
そこは露頭があまりよくなく、
重機をつかって、掘ってつくったもので、
あまり立派な露頭ではないようでした。
そして、確か境界には墨か粘土のような黒っぽい薄い層が
あったように記憶しています。
でも、ヨーロッパで私が見たようなものより、
小規模ですが、あるかないかということは大きな差です。
日本でも、KT境界はあったのです。
以上が回答です。」

というものでした。


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