地球の歴史
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Essay■ 1_212 月の形成 1:起源の仮説
Letter■ 祝賀会・静かな幕引き
Words ■ 定活でファイドアウト


(2024.03.21)
 月に関するいくつかの新しい知見が報告されました。まとめてシリーズにして、紹介していきます。月の起源に関していくつかの説がありました。これまでどのような説があり、それぞれでどこが課題なのかを紹介していきましょう。

Essay■ 1_212 月の形成 1:起源の仮説

  かつて、月の起源には、いくつもの説がありました。起源説としては、分離説(分裂説、親子説)、捕獲説(他人説)、集積説(兄弟説、双子)などに分類され、古くから議論されてきました。現在では、ジャイアント・インパクト説(巨大衝突説 giant impact)が有力となっています。それぞれ、どのような説かをみていきましょう。
 分離説とは、古くからある説で、地球から月が分離してできたというものです。かつては地球の自転が速かったため、地球のマントル物質が飛び出して月が形成されたとする説です。地球がマントルが分裂するほど高速回転していたとすると、現在の地球と月の運動(角運動量)と合わなくなります。
 捕獲説は、太陽系初期に多数形成された微惑星の一つが、地球に捕らえられたというものです。月が地球に捕獲される時、月の運動エネルギーを減らさなければなりません。その方法は現実的ではないものになります。
 集積説は、地球と月は近くで一緒に形成され、連星の状態になったとするものです。ところが、似たような材料物質からできたはずなのに、天体全体の平均密度や平均化学組成に違いがあり、月では揮発成分が少なくなっています。月でも金属鉄の核を持つはずなの、核がないかあっても小さいと推定されています。ただし、同位体組成が似ています。
 これらの3つの説は、いずれも課題の多いモデルとなります。地球と月の岩石の同位体組成が類似しているのに、いくつかの化学組成の違いや運動(角運動量の類似)が問題となっていました。
 ジャイアント・インパクト説より前には、衝突説があり、地球に天体が衝突して、月が飛び出してできたというものです。衝突は、偶然で稀な出来事だと考えられ、もっと困難な説だと考えられてきました。しかし、太陽系初期のシミュレーションにより、多数の微惑星が形成され、衝突合体しながら成長していくことが明らかになってきました。天体同士の衝突は頻繁に起こり、衝突の終わりころには、大きな原始惑星同士が衝突するすることになったと考えれました。それがジャイアント・インパクト説で、現在では、もっとも有力な説となってきました。
 では、ジャイアント・インパクト説で、月はどのようなプロセスでてきていくのでしょうか。いろいろなシミュレーションがなされてきていますが、非常に短期間でできたという報告がありました。その内容は次回にしましょう。


Letter■ 祝賀会・静かな幕引き 

・祝賀会・
先週、学位記授与式がありました。
コロナ禍も終わり、通常通りに開催されました。
その後の祝賀会も、例年通りに実施されました。
全学での開催なので、
落ち着いて話せないのですが
賑やかな会になります。
例年、祝賀会に出席しているのですが、
今年から出席を控えることにしました。
祝賀会のあとも、
学科やゼミの学生たちと
宴会をしていました。
今年度から、ゼミを持たなくなったので、
学生とゆっくりと宴席を囲む場がなくなりました。
さみしいですが、しかたがありません。

・静かな幕引き・
退職まで、あと1年となりました。
失礼にならない程度に、
静かに幕引きをしたいと考えています。
本来なら、退職1年前は校務分掌も
最低限となるはずです。
諸般の事情で、役職に就くようになりました。
しかたがない事情なので引き受けましたが、
それを最後の奉公と思って、
つつがなく務められればと思っています。
サバティカル以降、少しずつですが、
定活(定年活動)を進めています。