地球の歴史
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Essay■ 1_210 テクタイト 4:地下のクレータ地形
Letter■ 静かなキャンパス・研究に励む
Words ■ 今は研究に精進する時


(2024.02.08)
 インドチャイナイトは広域に分布しているのに、クレータが見つかっていません。クレータ地形が地表に残されていないためです。砂漠の地下から見つかったクレータの証拠を紹介していきましょう。

Essay■ 1_210 テクタイト 4:地下のクレータ地形

 広域に分布しているテクタイト(オーストラライト、インドチャイナイト、チャイナイトなどの名称がありますが、ここではインドチャイナイトと呼びます)のクレータは見つかっていません。しかし、前回紹介したように、衝突クレータの位置が限定できたという論文が報告されました。
 この論文では、人工衛星による重力および地磁気の探査データから、中国北西部のバダイン・ジャラン砂漠に落ちたと考えました。探査データでは、地下にクレータ構造があることがわかってきました。クレータは、テクタイトの飛び散っているもっとも北の外側にあり、位置的にも合うところでした。しかし、そこは砂漠地帯なので、地形的な痕跡は残されておらず、これまで発見されなったのでしょう。
 衛星から探査されるのは、重力や磁気の平均的な値との差です。重力であれば、地下の物質の密度差があるところ、磁気であれば、通常と異なった磁気的性質の岩石の地域が検出できます。その異常の分布が、クレータの形状になっているかを探ります。表層に現れていない地下の様子を、衛星を用いて広域に探る手段にできます。
 重力では、負と正の異常の分布の状況で、位置が特定されました。ここでは、負の重力異常のところを正の異常が環状に取り囲んでいました。負の重力異常が直径50kmほどあり、その周りを正の重力異常が100kmほどで縁を囲んでいました。地形では見えない地下に、存在していたクレータを見つけたことになります。
 このような重力異常が形成された仕組みは、衝突した地点で、クレーターの中央が持ち上がり山地になります。破壊された岩石なので低密度なので、負の重量異常になったと考えられました。一方、破壊されていない元々の岩石があるところは、正の重力異常の部分となります。
 地磁気のデータでも、磁気異常が乱れているのですが、その分布がクレータの縁に沿っていることがわかり、クレータの存在を支持していました。
 今回は、地下に隠れているクレータらしきものを、探し当てたという報告でした。しかし、地形にでていませんし、シャッターコーンの存在やその分布など、直接の証拠は見つかっていません。衝突クレータだろ確定するためには、掘削などして、なんとか直接の証拠を見つけなければなりません。ただし、200mほど掘らないとわかりそうにありませんが。
 インドチャイナイトというテクタイトについては、衝突クレータがみつかっていないことから、いろいろな研究がなされてきました。次回以降は、このテクタイトについて研究を、いくつか紹介していきましょう。


Letter■ 静かなキャンパス・研究に励む 

・静かなキャンパス・
大学は定期試験と追試が
そして一般入試も終わりました。
外見上は一段落しているように見えます。
4年生の卒業がかかっていますので
教員には採点評価が早急に求められています。
学内の競争的資金の申請の締め切りもあります。
来年度のシラバスの作成、入力も必要になります。
入試判定、卒業、進級、資格認定の審査
などの会議も続いていきます。
大学からは、学生の姿が少なくなります。
そのため、キャンパスからは慌ただしさが消えて、
落ち着いた日々が流れていきます。

・研究に励む・
現在、論文1編と本2冊の執筆を
並行して取り組んでいます。
静かなキャンパスであることが助かります。
いろいろと校務は続くのですが、
時間的にはもっとも余裕ができる時期になります。
今年が、ライフワークをまとめる
最後のチャンスとなっています。
日々、自身が課したノルマをこなすため
あくせくと研究に励んでいます。