地球の歴史
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Essay■ 1_204 天体衝突の頻度は 3:クライオジニアン紀
Letter■ 今年の年度末・城川町
Words ■ 北国も、めいてきました。


(2023.03.23)
 日本の月探査衛星「かぐや」は、詳細な画像を多数撮影しました。画像を利用して、大きなクレータの形成年代に関する研究が報告されました。そこでは、小さなクレータを用いてクレータ年代学を用いています。

Essay■ 1_204 天体衝突の頻度は 3:クライオジニアン紀

 2020年のNature Communications誌に、大阪大学の寺田健太郎さんたちが、
Asteroid shower on the Earth-Moon system immediately before the Cryogenian period revealed by KAGUYA
(かぐやによって明らかにされたクライオジニアン紀直前の地球ー月系の小天体シャワー)
というタイトルで報告されました。この研究には、クレータ年代学が巧妙に利用されています。
 まずは、論文のタイトルに使われているクライオジニアン紀という聞き慣れない時代について説明しておきましょう。
 クライオジニアン紀とは、原生代の後期(7億2000万年前から6億3500万年前)の時代名になります。論文では、「クライオジニアン紀直前」となっているので、8億年前ころになります。カンブリア紀(5億4100万年前がはじまり)より前の時代です。
 小惑星のシャワーとは、シャワーのように降り注いだとことになります。これは、大量の隕石が衝突したことを意味します。また、地球−月系となっているのは、月は地球の衛星と一連の関係にあるという意味です。月で8億年前ころに大量の隕石の衝突が見つかったのですが、月での衝突の現象は、月の母星となる地球でも起こっていたはずということになります。
 寺田さんたちは、かぐやの画像から、直径20km以上の59個のクレータを調べました。このクレータの形成年代を正確に決めるために、少々複雑な方法が取られています。
 年代を調べたいのは、20km以上の大きなクレータです。本来なら表面の形成時代を調べるクレータ年代学を、クレータができた時代を決めるために利用しています。
 大きなクレータができる時は、激しい衝突によって、周辺の地域に物質が飛び散っていきます。クレータ周辺は、放出物が覆ってしまい、きれいな平坦な地面が形成されます。その面は形成されたばかりでクレータはなく、そこに隕石が衝突すると、新たに小さなクレータが形成されていきます。
 大きなクレータの周辺にできている、直径1kmから100mの小さなクレータの数を調べ、そこにクレータ年代学を適用して年代を調べいきます。このような方法で、大きなクレータができた時代を推定していきました。なかなか素晴らしいアイディアです。
 直径93kmの大きなコペルニクスクレータの周辺では、860個の小さなクレータで年代を調べてチェックされています。それだけの数があれば、統計的にも十分な検討ができます。
 さて、59個のクレータで、この方法で形成年代を調べて比べました。すると8個のクレータで、形成年代が一致することがわかりました。モデルを変えると、17個も一致することがわかってきました。8個もの年代が一致することは確率的にはありません。
 このクレータの形成時代の一致は、なにを意味するのでしょうか。次回としましょう。


Letter■ 今年の年度末・城川町 

・今年の年度末・
年度末の大学はバタバタします。
学位記授与式は終わったのですが、
入学手続きや、入学生への準備など
多くの仕事あり、忙しくなります。
4月からのサバティカルで、
3月末には四国への引っ越しがあります。
今度は夫婦ふたりですが、
引っ越しも、その分大掛かりになります。
でも、移動のバタバタが終われば、
四国での新生活への期待が溢れます。
半年ですが研究と調査だけでなく、
田舎の生活を満喫したいと考えています。

・城川町・
サバティカルは、愛媛県の西予市です。
市町村合併以前は、城川町という町があり、
後輩がそこの役場にいて
地質館の開設の手伝いから付き合いがはじまりました。
そこから、現在まで交流が続いています。
2010年に1年間サバティカルで滞在し、
西予市は2013年9月に日本ジオパークに
「四国西予ジオパーク」として認定されました、
2020年春には四国西予ジオミュージックが開館しました。
サバティカルの期間に、
博物館活動にも協力できばと思っています。