地球の歴史
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Essay■ 1_194 カーニアン多雨事象 6:ランゲリア洪水玄武岩
Letter■ デカントラップ・のんびりと
Words ■ コロナの感染爆発が心配です


(2021.05.13)
 層状チャートの研究から、多雨が起こり、それが生物の大絶滅、種の誕生、海洋無酸素事件などの連鎖が見えてきました。さらに、同時代のパンサラッサでのLIPsを通じて、連鎖は続いていきます。

Essay■ 1_194 カーニアン多雨事象 6:ランゲリア洪水玄武岩

 北アメリカの西部に分布しているランゲリア洪水玄武岩について紹介していきます。
 ランゲリア洪水玄武岩の「洪水」と「玄武岩」という言葉は、水と岩石なので液体と固体ですから、関連づきにくい言葉です。この両者が結びきが、ランゲリア洪水玄武岩の意味することがわかってきます。
 玄武岩は火山岩ですから、マグマからできたものです。玄武岩マグマは、マグマの中でも、もっとも粘性が小さいので、「さらさら」と流れます。「さらさら」といいましたが、水よりは粘性が大きのですが、水のように流れる性質を持っています。
 「さらさら」のマグマが大量に噴出すると、マグマが洪水のように流れていきます。マグマは冷えれば岩石になるので、噴出孔の周辺に大量に、そして広大な地域で玄武岩が広がっていくことになります。マグマの量が多ければ、広い高原状となっていき、台地玄武岩とも呼ばれます。
 インドのデカン高原は、デカントラップと呼ばれる洪水玄武岩が、アメリカのワシントン州やオレゴン州に広がるコロンビア洪水玄武岩などが有名です。「洪水玄武岩」と名称がつけられるようなマグマの活動は、前回紹介したLIPsによるものが多く、その時代の地球環境に影響を与えることもありえます。ランゲリア洪水玄武岩の影響が、今回のカーニアン多雨事象を引き起こしたと考えられています。
 ランゲリア洪水玄武岩は、北アメリカ大陸の西部に分布しています。パンサラッサの海洋プレートが、アメリカ大陸に沈み込んだことで、形成された付加体の中に大量に見つかっている玄武岩類になります。同時期のカーニアン期の火成活動で似た産状をもった玄武岩が、今回調査された層状チャートが属している秩父累帯の南帯(三宝山帯)の玄武岩類にあたります。この帯の玄武岩は、海洋プレートの沈み込みによって形成された日本列島の付加体になります。
 同時代に似た機構で大陸に付加した玄武岩は、秩父帯だけでなく北上帯から北海道の渡島帯、そして極東ロシアのタウハ帯にまで断続的に連続していきます。これらすべては、パンサラッサの海洋プレートの沈み込みで付加体として形成されたものだと考えられています。3000 kmにわたって分布している長大な玄武岩帯になります。
 これらの極東地域の玄武岩帯と北アメリカ大陸のランゲリア洪水玄武岩は、分かれて分布していますが、プレート活動によって分裂してしまったためだとされています。もともとはパンサラッサ海でひとつのLIPsから形成されたと考えています。さらに著者らは、日本からロシアにかけて連続する玄武岩類と、北アメリカ大陸のランゲリア洪水玄武岩も、超海洋パンサラサ海の同一のLIPsの活動で、カーニアン多雨事象を起こしたのではないかと推定しています。
 日本の小さな露頭のチャートの中のコノドントや化学成分から、大胆な推定が生まれてきました。もちろん、今後も議論も必要ですが、足元の石ころから、過去の地球のダイナミズムが垣間見えます。


Letter■ デカントラップ・のんびりと 

・デカントラップ・
デカントラップのトラップとは
スウェーデン語の階段を意味するそうです。
この地域観が階段状の丘から名付けられたそうです。
デカン高原を生み出したマグマです。
デカントラップのLIPsは白亜紀末に活動しているため、
恐竜の大絶滅でも重要な役割を果たしていました。
一見関係にない現象や岩石が、
関連しあっていくのも不思議ですが、
それを解明していくことが科学の醍醐味ですね。

・のんびりと・
ゴールデンウィークの1週間は、
北海道のひっそりとした田舎町で
夫婦でのんびりと過ごしました。
2年前にもいったところでしたが、
昨年もその地域に行く予定をしていたのですが、
COVID19のために中止をしました。
今回は、なんとかでかけることができました。
何もないところですが、私には快適なところです。
午前中にブラブラして、午後には温泉に入って
買い物をして、宿泊所でのんびりとしました。
道内には、しばらく滞在したくなるような
私好みの地域がいくつかあります。
しかし、希望の季節に長期滞在でき
自炊できるような手頃なところとなると
そうそうは見つかりません。
その数少ない地域で過ごしました。