地球の歴史
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Essay■ 1_192 カーニアン多雨事象 4:海洋無酸素事変
Letter■ 桜の花・待避旅行
Words ■ 北国も桜の季節になりました


(2021.04.29)
 三畳紀の地球では、大きな大陸のパンゲアと大きな海洋のパンサラッサに分かれていました。そんな時期に、多雨事象が起こっていました。その多雨は海洋にも大きな影響を与えたようです。

Essay■ 1_192 カーニアン多雨事象 4:海洋無酸素事変

 今回話題にしている「カーニアン期」は、2億3700万年前から2億2700万年前の時代でした。この時期に、世界各地で、湿潤な(雨が多い)気候であったことは知られていました。イギリスの地質学者は、このうち200万年間で激しい雨が降った時期があり、それを「カーニアン多雨事象(CPE: Carnian Pluvial Episode)」と呼びました。カーニアン多雨事象は、初期カーニアン期(ジュリアンと呼ばれています)に起こっています。
 その時期には、海洋生物の絶滅とともに、石灰質の殻をもったプランクトンや現代型の造礁サンゴも誕生しています。陸上では、恐竜の多様化や哺乳類も誕生しています。カーニアン多雨事象の時期は、生物進化に重要だったようです。
 多雨事象の原因として、北アメリカの西部で「ランゲリア洪水玄武岩」の火山活動が考えられていました。ランゲリア洪水玄武岩は、アラスカ、ユーコン、ブリティッシュコロンビアの海岸沿いに、点々と分布する付加体中の玄武岩としてあります。全体として、巨大な玄武岩の火山地帯になっています。その影響は、世界的に広がったと考えられています。
 問題は、火山活動の時代と多雨事象とが、年代として一致していたかどうかが不明な点でした。
 今回の報告に用いられたのは、岐阜県坂祝(さかほぎ)、木曽川の河原に露出している層状チャートでした。層状チャートの年代は、カーニアン前期ものです。坂祝の層状チャートが堆積したのは、当時もっとも広い海洋(パンサラッサと呼ばれています)の赤道付近だったと考えられています。
 坂祝の層状チャートのオスミウム同位体組成は、低い値がでした。オスニウム同位体比が低いのは、マントル物質の特徴に一致します。そこから、いろいろ推測してされていきます。
 層状チャートでマントルの特徴を持つということは、マントル由来の物質が地球全体、もしくは坂祝の層状チャートが堆積したいパンサラッサに持ち込まれたことになります。当時の地球の陸と海の分布は、超大陸パンゲアと大きな海パンサラッサという状態でした。パンサラッサに火山物質が広がるには、大規模な火山活動が起こったいてことになります。
 活発な火山活動とともに、海洋では無酸素事変も起こっていることもわかっています。無酸素事変とは、海水中の酸素が極度に少なくなったり、なくなったりする異変です。無酸素事変という海洋環境の変化により、生態系に大きな変化(大絶滅)を起こしたと考えられています。
 層状チャートで、色が黒っぽくなったり、チャートの堆積がなくなり黒っぽい粘土層になったりしています。チャートの赤は酸化された鉄の色で、チャートの欠如はプランクトンの大絶滅を意味しています。これは、無酸素事変によるものだと考えられています。
 この時期の海洋無酸素事変は、パンサラッサだけでなく、別の内湾域であったテシス海でも見つかっています。テチス海では、黒色頁岩や有機物に富む堆積物が堆積しています。黒色頁岩や有機物が分解されずに地層に残ったということです。その原因は、海洋底で酸素の供給がなくなっていた可能性があります。
 全地球の広域で、無酸素事変が起こっていたと考えられます。このような海洋無酸素事変は、これまで何度か起こったことがわかっていますが、その原因については確定していません。
 カーニアン多雨事象の研究では、年代を正確に決定されていませんでした。年代決定を正確におこなうことが重要で、この報告ではコノドントと有機炭素同位体層序という方法を用いて、年代のチェックされています。その詳細は次回としましょう。


Letter■ 桜の花・待避旅行 

・桜の花・
今年は暖かくて、北海道でも1週ほど
桜の開花が早くなっています。
日本各地の感染拡大地域では、
花見の自粛も強いられています。
花を見るだけならいいのでしょうが、
花の下での密集や宴会が
感染拡大を起こすことになるのでしょう。
田舎では人出がないところもあり、
そこではひっそりの身内だけで
花を愛でることもできるでしょう。
私も、人気のないところで花見をしようと考えています。

・待避旅行・
ゴールデンウィークに入りました。
幸い私の街は、感染拡大地域ではないので外出も可能です。
田舎にしばらく待避しようと考えています。
1週間ほど家内も一緒に滞在します。
その時、少し調査もしようと考えています。
1年半ぶりの野外になります。
まあ、家族での待避旅行でもあるので、
のんびりしてこようと考えています。