地球の歴史
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Essay■ 1_190 カーニアン多雨事象 2:オスニウム同位体
Letter■ 芽吹き・講義開始
Words ■ 北国も春が来ました


(2021.04.15)
 後期三畳紀のカーニアン期に雨が多かったという報告がありました。海洋のオスニウム同位体を用いて調べているとのことでした。オスニウム同位体とは、どのようなものでしょうか。

Essay■ 1_190 カーニアン多雨事象 2:オスニウム同位体

 「カーニアン多雨事象」では、オスニウム同位体がキーワードになっていることは、前回、紹介しました。今回は、そのオスニウム同位体についてみていきましょう。
 オスニウムは、Osという原子記号で、周期律表では6列目にある原子番号76です。オスニウムの左側(質量数の小さい側)にレニウム(Re)が、右側にイリジウム(Ir)があります。これらは、白金(プラチナ、Pt)の近くにあり、化学的挙動も似ているので、白金族(5列目にRe、Rh、Pdが、6列目がOs、Ir、Ptが属する)に区分されています。
 地球化学的に考えると、金属で「鉄(Fe)」と挙動を共にしやすい元素です。地球化学的に考えるとは、地球を構成している元素で、量の多いもので、重要な化学的指標になるものを中心に見ていくことになります。ですから、鉄が移動、濃集しているところに、オスニウムも移動、濃集することになります。
 オスニウムには質量数が、184、186、187、188、189、190、192の7つの同位体があります。同位体とは、原子番号は同じで、質量数が異なっているものです。オスニウム同位体の組成は、188Os/187Osの比のことを意味します。岩石中のオスニウム同位体組成を調べて、その由来を調べる方法です。ただし、含有量は、それを同位体組成で比べると、量に左右されることなく、由来の違いを検討できます。
 オスニウムは、地球化学的に鉄と挙動を共にしますので、地球中心部の核(コア)やマントルの多く含まれていますが、大陸地殻の岩石にはほとんど含まれていません。白亜紀と古第三紀の時代境界(K-Pg境界)で、恐竜の大絶滅を示す根拠となったイリジウム(Ir)と同じ白金属です。
 オスニウム同位体による研究方法は、共同研究者の佐藤さんたちが、すでに確立され、利用されているものです。以前「2_141 三畳紀の大絶滅 4:層状チャート」(2016.11.17)で紹介しました。時代境界で、隕石の証拠となる小さな金属粒(宇宙塵)を見つけています。その時、岩石のオスニウムの同位体組成を調べて、隕石の根拠としていました。
 今回は、隕石の証拠ではなく、海洋の特徴を調べようとするものです。そのため、海の素材を入手しなければなりません。過去の海水は、手に入らないので、それに変わるものを用意しなければなりません。その素材とはなんでしょうか。海洋と密接な関係をもった岩石を調べることで、海の特徴を調べることになります。それは、その時代にできた層状チャートでした。層状チャートは、深海底で堆積したものだとされています。
 層状チャートが、海の特徴をどう反映しているのでしょうか。次回としましょう。


Letter■ 芽吹き・講義開始 

・芽吹き・
先週は、北海道は寒波に襲われて雪が降りました。
週末には暖かくなったので、
今週には春の陽気が戻ってきました。
週末に我が家の車も、
冬タイヤから、夏タイヤに交換しました。
このまま暖かい日が続くと、
春の芽吹きが、一気にはじまりそうです。
森の中を散策したくなります。

・講義開始・
大学は新年度になり、各地で講義もはじまりました。
多くの大学でも同じだと思いますが、
対面授業と遠隔授業が混在していると思います。
ただし、対面授業もあるので、
キャンパスで学生たちが多数みられます。
生協の購買や食堂も賑わっています。
私も、半分は対面講義なので
学生の顔を見ながら講義ができるのはありがたいですね。
以前まで、それが当たり前だったのですが
それがなくなることで、
はじめて重要性、大切さを思い出せますね。