地球の歴史
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Essay■ 1_185 初期重爆撃期 2:HED隕石
Letter■ 隕石は人を選ぶ・博物館にて
Words ■ 北海道は一気に涼しくなりました


(2020.09.17)
 石質隕石のうち、分化したHEDと呼ばれるグループは、小惑星ベスタから飛んできたのではないかと考えられています。HEDのなかでも玄武岩質ユークライトを調べることで、ベスタの地殻の情報が読み取られます。

Essay■ 1_185 初期重爆撃期 2:HED隕石

 専門的論文をみていくのに、まず、隕石の紹介からはじめていきましょう。
 この論文では、隕石でも少々特異な種類に注目され分析されています。隕石の種類には、石質隕石、鉄隕石、両者が混在した石鉄隕石の3つに区分されています。一番多いのは石質隕石ですが、それぞれの隕石はさらに細分されています。
 隕石は、それを供給した天体(母天体と呼ばれています)があると考えられています。その天体が成長していき、ある時破壊され、その破片が地球に落ちてきたのが隕石となります。隕石の中で似たものは、同じ母天体から由来したと推定されています。
 成長していった母天体では、鉄が溶融しが落下、中心部に集積していき、核にが形成されていきます。核の部分が砕けると、鉄隕石の起源となります。石鉄隕石は、核とマントルの境界や鉄の集積途中にあたる部分から由来していることになります。
 石質隕石には、球状の粒子(コンドルール)が集まったコンドライトと呼ばれるものと、粒子がないエイコンドライトに区分されます。隕石の大半はコンドライトです。コンドライトは、太陽系の最初に形成された固体物質の集合体で、惑星や衛星などの材料になったものと見なされています。最初の固体が集まった組織が残っているので、母天体があっても、変成や溶融が起こることなく、成長していない小さい天体から由来したことになります。
 一方、エイコンドライトは稀なタイプです。エイコンドライトは、溶融した特徴をもっており、成長した母天体から由来したことになります。エイコンドライトにもいくつかの種類があり、その中で半分近くを占めるのが、HED隕石(ホワルダイト、ユークライト、ダイオジェナイトの頭文字をとったグループ)です。このHED隕石のグループの母天体は、小惑星ベスタの地殻に由来したと考えられています。
 HED隕石の研究すれば、小惑星ベスタの実態が明らかにあります。年代から、ベスタが激しい火成作用で結晶化した時期が、約44.3億年前から45.5億年前と推定されています。溶融し分化した隕石なので、当然、惑星として内部に層構造(核、マントル、地殻)ができていたり、地殻には火山岩である玄武岩もありました。かつては、火山活動をしていた可能性があることもわかってきました。
 今回の論文で分析されたのは、ベスタを母天体とするユークライトでも玄武岩質ものでした。これらを知らべることは、ベスタの惑星表層の地殻を探ることになります。論文では、5つの玄武岩質ユークライトと調べられています。その3つ(Juvinas、Camel Donga、Stannern)は角礫状で、他の2つ(AgoultとIbitira)は角礫化していないものです。


Letter■ 隕石は人を選ぶ・博物館にて 

・隕石は人を選ぶ・
小さな隕石でも、珍しい種類もあり、
そこから読み取れる情報は、貴重なものになります。
素材は小さいですが、読み取った情報は
惑星形成や太陽系の創世期の重要な証拠となります。
小さいですが、貴重な試料です。
隕石から情報を読みとるためには、
施設や機材を備え、それを扱える研究者でなければなりません。
そしてなにより、アイディアが必要になります。
隕石の研究は、人を選びます。

・博物館にて・
博物館に在籍しているときは、
業務として多様な隕石を集めていました。
その結果、いろいろな隕石を肌で感じることができました。
しかし、隕石からの情報は、
高度な分析装置を用いてしか読み取ることができません。
博物館では、専門家の研究のために
試料を提供することもありました。
しかし貴重な展示用資料でもあるので、
誰にでもというわけにはいきませんでした。
日本では、極地研究所があり、
南極で採取した大量の隕石を収蔵しています。
目的をもった研究者には無料で提供されます。
また、研究設備も整っています。
今の研究者は恵まれた条件が提供されています。