地球の歴史
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Essay■ 1_184 初期重爆撃期 1:専門誌の論文
Letter■ 専門誌・自然災害
Words ■ 台風のお見舞い申し上げますす


(2020.09.10)
 専門誌に紹介された論文で、興味深いものが掲載されました。専門論文は、限られたコミュニティ内でのものなので、前途となる知識がそれなりにないと意味が理解できません。今回はそんな論文を紹介します。

Essay■ 1_184 初期重爆撃期 1:専門誌の論文

 地球、あるいは太陽系惑星の形成過程に再考を迫る重要な論文が報告されました。地球・惑星科学の専門誌である"Earth and Planetary Science Letters"の9月号(電子版には2020年8月26日公開)に掲載されたものです。
 Evidence for early asteroidal collisions prior to 4.15 Ga from basaltic eucrite phosphates U-Pb chronology
 (玄武岩質ユークライトのリン酸塩のU-Pb年代測定から41億5000万年前より以前の初期重爆撃期の証拠)
というタイトルの論文でした。広島大学大学院の小池みずほ助教らの研究グループによる成果です。専門誌なので専門家のための論文になり、タイトルだけでは、一般の人にはその意義がなかなか理解できないものになっています。まあ、これが専門誌の役割でもあります。
 まず、この論文のタイトルを理解するためには、玄武岩質ユークライトとリン酸塩の年代測定、41億5000万年前より以前という年代、重爆撃期というものを理解していないとなりません。
 少し詳しくいうと、玄武岩質ユークライトという隕石の種類があるのですが、論文内では、角礫化していないものと、しているものでの年代測定をして比較しています。また、年代測定に利用されたのは、リン酸塩なのですが、アパタイトと呼ばれる微小な鉱物でした。そもそもアパタイトとはどのような鉱物で、なぜ年代測定に用いるのでしょうか。年代測定には、SIMという装置(この論文ではNanoSIM)という特別な装置を用いて、微小なアパタイトが分析されています。年代として、41億5000万年前というものと、それ以前の意味するところ、また重爆撃期には初期と後期があるので、年代とどう関係がるのでしょうか。これらのいろいろなことを理解していないと、次の段階へ進めません。
 この論文は、ある種の隕石から得られた年代から、今までの惑星形成の一般的なシナリオに対して修正を迫る内容となっています。次回からは、上の専門的な内容を紹介ながら、論文の意義も示していきましょう。


Letter■ 専門誌・自然災害 

・専門誌・
専門誌に掲載される論文は、
専門家のコミュニティだけでの
成果報告とその評価の場に提供されるものです。
同じ専門誌に多数の掲載された論文でも
雑誌がカバーする分野が広ければ、
自身が興味を持っている分野以外は
なかなか理解が難しいこともあります。
今回の論文でいうと、隕石、年代測定、惑星形成過程など
それぞれに関する基礎知識がないと、
その意義は理解できません。
専門誌の論文は、読む人も選びます。

・自然災害・
大型の台風10号が沖縄から九州を襲いました。
大型であったので、早くから特別警報がだされ、
その後も各地で警報が続きました。
九州や四国、中国では、洪水や停電の被害もでたようです。
お見舞い申し上げます。
幸い北海道は大きな影響を受けまぜんでした。
夏の暑さから一転、台風の被害です。
自然災害がここ数年繰り返されています。
しかし、気象の観測技術が向上して予報が正確になっても
やはり最終的に個々の人の判断が重要になってきます。