地球の歴史
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Essay■ 1_180 チクシュルブの衝突 1:激変説
Letter■ 前期の集中講義・蒸し暑い日
Words ■ K-Pg境界の大絶滅


(2020.08.06)
 白亜紀と古第三紀の時代境界で大絶滅がありました。その絶滅は、隕石の衝突によるものでした。その衝突に関する新しい成果が報告されました。その論文を紹介する前に、大絶滅に関する歴史的な説明からはじめましょう。

Essay■ 1_180 チクシュルブの衝突 1:激変説

 白亜紀末に起こった恐竜の大絶滅が、隕石の衝突が原因であるという説は、かなり普及してきました。白亜紀末と古第三紀の時代境界なので、時代名の頭文字をとってK-Pg境界と呼ばれます。この大絶滅は、恐竜だけなく、多くの生物種が絶滅しています。
 大絶滅の原因が、当初は隕石衝突であることは、なかなか受け入れられませんでした。それは隕石衝突という現象が、天変地異という激変説に相当するためでした。認められるまで、激しい議論も起こりました。
 激しい議論が起こった背景のひとつには、西洋世界特有の宗教的理由もありました。かつて、西洋ではキリスト教が支配的な時代が長く続いていました。科学も、科学者も当然、宗教の影響を強く受けていました。そのため、聖書に描かれたノアの洪水のような激変によって、生物の絶滅が起こったと考えられていました。しかし、科学の発展によって、証拠や検証にもどつく論理体系が整ってきました。その結果、激変説は証拠の欠如によって否定されてきました。
 そのかわりに、斉一説が主流となりました。斉一説とは、現在起こっている現象は、過去にも同じように起こっていたという考えです。大絶滅も、現在起こっている現象や原因で、説明できるはずだと考えられていました。斉一説は、現在でも有力な考え方で、過去を探るためには、重要な考え方でもあります。
 西洋世界では、科学が宗教の呪縛を逃れるのに、長い時間と葛藤を要しました。そのため、西洋の科学者には、激変説へのアレルギーのようなものがあり、斉一説の重視の考え方があるのかもしれません。
 生物の絶滅は、大きな気候変動や生存競争など、現在でも起こりうる現象や原因によって起こるものだと考えられていました。現在にも見られる現象や原因を解明できれば、過去の地層や岩石でそのような現象を見つければ、斉一説に基づき、大絶滅の原因を解明できます。
 研究の進展により、大絶滅事件も何度かあったことが、化石の証拠からわかってきました。斉一説の積み重ねで、説明可能になります。K-Pg境界の恐竜絶滅も、他の大絶滅の原因のいずれかになっていました。
 そんなところに、隕石の衝突による大絶滅が復活して登場しきました。洪水ではありませんが、天変地異説の再来、激変説が再度登場してきことになります。西洋の科学者は、心穏やかではありませんでした。その上、その説を提唱したのが、地質学者ではなく、物理学者だったことも、反論が起こった原因でもありました。
 では、隕石衝突説は、どのような証拠をもとに、提唱されてきたのでしょうか。次回としましょう。


Letter■ 前期の集中講義・蒸し暑い日 

・前期の集中講義・
今年の我が大学の前期の講義は、
来週まで続きます。
祝日も関係なく授業がおこなわれます。
それでも、前期分の授業日数を確保するために
お盆も祝日も返上になります。
また、翌週の17日からは、
前期の集中講義がはじまります。
私も1つ担当があるので、
その準備もしなければなりません。
新たにリモート用の授業を、
つくらなければなりません。
15回分を一気に再構成していかなければなりませんので
なかなか大変です。

・蒸し暑い日・
今年の夏の北海道では、
涼しい日が続いています。
ただし、天候が不順で、
日照時間も雨も少ないようです。
農家が困っているのではないでしょうか。
ここ数日蒸し暑い日が少し続いています。
しかし、夜は涼しいので、
窓を閉めなければなりませんが。