地球の歴史
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Essay■ 1_179 大陸地殻の新知見 4:地殻下部
Letter■ リモート・静な夏
Words ■ 季節は移ろうがいつもとは違った夏


(2020.06.11)
 アフリカのクラントン下の地殻について調べられました。キンバーライトの捕獲岩を用いています。捕獲岩は、大陸下部で変成作用を受けた岩石であることがわかり、原岩の化学的特徴から大陸の形成史の証拠もでてきました。

Essay■ 1_179 大陸地殻の新知見 4:地殻下部

 大陸地殻に関する3つ目の論文は、3月17日に発表された
Eclogite and garnet pyroxenite xenoliths from kimberlites emplaced along the southern margin of the Kaapvaal craton, southern Africa: mantle or lower crustal fragments?
(南アフリカ、カープヴァール・クラトンの南縁に沿って定置したキンバーライトからのエクロジャイトとざくろ石輝石岩の捕獲岩:マントルもしくは下部地殻の断片か?)
というものでした。この論文もひとつ目に紹介したのと同じく、キンバーライト(深部で形成されたマグマによる火山岩)から見つかった捕獲岩を調べたものです。調べた捕獲岩は、エクロジャイトとざくろ石輝石岩です。この2種の岩石の説明を少々しておきましょう。
 エクロジャイトとは、超高温高圧の条件でできる変成岩の一種です。主にザクロ石と輝石からできた岩石です。玄武岩組成の岩石が変成されてできるもので、造山帯ならば、沈み込んだ海洋地殻がその候補となります。また、ザクロ石輝石岩(輝岩ともいいます)も、超高温高圧の条件でできたことを示しています。アルミニウムの多い岩石では、珪酸アルミニウムの成分が温度圧力条件で変化していきます。浅いところでは、斜長石(この岩石では少ない)や輝石になっているのですが、高圧になるとザクロ石になっていきます。それより深くなるとスピネルになっています。ガーネットはキンバーライトの捕獲岩によく見られるもので、地殻下部からマントルの条件で形成されるものです。
 今回調べられた捕獲岩は、エクロジャイトはザクロ石と輝石(オンファス質輝石)を主として、ザクロ石輝石岩はザクロ石を含む斜方輝岩と輝岩(斜方輝石と単斜輝石を含むウエブステライトと呼ばれるもの)でした。いずれもカンラン石が少ないのが特徴の岩石となります。これはマントルを構成している岩石でないことを意味します。
 捕獲岩を分析した結果、エクロジャイトは、815〜1000℃の温度、1.7GPaほどの圧力(50〜55kmの深さ)の条件で変成されたもので、この地域の地殻下部の条件に相当するそうです。ザクロ石輝石岩の変成条件は、686〜835℃となりやや低い温度ですが、変成圧力(深さ)は似ていました。
 両岩石の同位体組成(Nd、Sr同位体)を調べても、この地域の下部地殻に相当する値でした。いずれも似た原岩から由来したようで、オンファス質輝石が主とすることからナトリウム(Na)が乏しい、つまり斜長石が少ない岩石が起源となっていると推定されています。これらの2種類の捕獲岩の由来は、古い時代の玄武岩組成の岩石が変成を受けて、オンファス質輝石(Na成分が少ない)を主とする輝岩となり、さらに高温高圧条件での変成作用を受けてザクロ石輝岩やエクロジャイトになったと考えられます。
 その形成場としては、大陸が衝突してナマグア−ナトル帯となり、地殻の短縮と厚化とともに変成作用が起こりました。その衝突は、10億〜12億年前にカープヴァール・クラトンが形成された時の出来事だと推定されました。その時、地殻下部にあった玄武岩質の岩石が、変成を受けたと考えられます。その後、マントルで形成されたキンバーライト・マグマが地殻を上昇してくる時、地殻下部にあった変成岩を、捕獲岩として取り込んだと考えられます。
 この論文では、地質学の基礎知識がない人にとっては、いろいろな複雑な論理構成をとっているため、非常に難解な内容となっています。ですが筋の通った説明となっていますので、信憑性はありそうです。
 地下の深い場所の様子が、地表に持ってこられた捕獲岩から探ることでできました。そこから、大陸の衝突の歴史、大陸形成史がわかってきました。


Letter■ リモート・静な夏 

・リモート・
北海道は、まだ新規感染者が出ていますが、
徐々に緊急事態からの回復が進んでいます。
大学も、今週からレベルが一つ下がりました。
ただし、現在の状況では、
学生は大学への入構はまだできません。
授業も会議、校務のリモートでやることになっています。
レベルが好転したことは、気分的にいいことです。

・静な夏・
北海道は初夏の陽気になりました。
朝、歩いてく時カッコーの鳴き声、
昼間にはエゾハルゼミのうるさいほどの鳴く声もします。
夏の気配が濃くなってきました。
今年の夏は、いつもの夏にはなりそうもありません。
いつもこの時期には、YOSAKOIの音が
あちこちで聞こえてくるのですが
今年は、聞こえてきません。
静な夏を迎えそうです。