地球の歴史
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Essay■ 1_172 日本最古の岩石 4:ナップとクリッペ
Letter■ 激しい褶曲・冷夏
Words ■ 涼しいのは過ごしやすくていいのですが・・・


(2019.07.25)
 造山帯の構造を詳しく調べると、大きな地質体が激しく移動をしていたことがわかってきました。ゆっくりとした大地の運動ではあるのですが、長い時間をかけると大きな移動が起こるようです。

Essay■ 1_172 日本最古の岩石 4:ナップとクリッペ

 西南日本では、大陸側(日本海側)に飛騨−隠岐帯があり、海側(瀬戸内海側)に舞鶴帯が分布しています。古い年代の構成岩石には時代が類似しているものと、異なったものが含まれていました。
 最近まで、古い造山帯が大陸側に、新しい造山帯が、時代順に配列していると考えられていました。つまり、造山帯は陸側から海側に向かって新たに形成されていくもの、あるいは島弧の造山帯が次々と大陸にくっついていくものと考えられていました。ところが、日本列島はかつてはユーラシア大陸にくっついていたのですが、2000万年前ころから大陸から分裂をはじめ、1400万年前には分裂が終わり、日本海ができます。しかし、日本の造山帯のほとんどは、大陸の縁で形成された記録となります。
 これまでの考えであれば、陸側に古い造山帯である飛騨−隠岐帯が、海側に舞鶴帯が分布しているということになりました。ところが、構造や造山帯の構成岩石の年代などが明らかになるしたがって、そんな単純な構造ではないことがわかってきました。
 造山帯では、地質体が薄い板上(造山帯の一部分)になって、新しい時代の地質体(造山帯の一部分)の上に低角度(水平に近い)の逆断層で重なっている構造がよくあることがわかってきました。古い時代の地質体が、押し縮められて、褶曲し、横に倒れて、別の地質体の上に乗っかったためできたと考えれます。このような構造をナップ(英語でnappe、ドイツ語でデッケ Deck)と呼んでいます。このような現象は、プレートが衝突したり、沈み込んだりするようなプレートの収斂境界で起こります。日本列島も昔も、現在のこのような場でした。
 ナップはもとの地質体とつながったものをいうのですが、ナップのどこかで侵食されていくと、本体から切り離されて、先の部分だけが残ることがあります。そのようなものをクリッペ(独語でKlippe)と呼びます。一方、侵食され、下にある地層が顔を出したものを、フェンスター(Fenster 地窓、テクトニックウィンドウ)と呼びます。
 ナップは丹念に調査すればわかるのですが、クリッペであることは、もとの地質体との連続が、なんらかの証拠で推定できなければわかりません。日本列島の造山帯でそのようなクリップの存在が明らかにされてきました。それは、堆積岩中の砕屑性ジルコンを用いて、各地の造山帯の中の地質体の年代も明らかにされることで明らかになってきました。
 一番陸側の造山帯がもっとも古いものではなく、海側にクリッペとして古いものが乗っかる構造が、何度も繰り返されていることがわかってきました。
 さらに、造山帯は大陸地殻が増えていくだけの作用に見えるのですが、構造適し侵食する作用もあることもわかってきました。それは次回としましょう。


Letter■ 激しい褶曲・冷夏 

・激しい褶曲・
アルプス山脈やヒマヤラ山脈、ロッキー山脈などで
激しい褶曲をした地層を見たことがあるでしょうか。
写真や映像で見たことがあるかもしれませんね。
その規模は、見えているものでも、数100mにサイズです。
地図や地質図でみると
もっと大きな数10kmから数100kmの規模の移動が
起こっていることがわかります。
日本列島はプレートが収斂(しゅうれん)する場なので
これのような規模の褶曲や造山運動が
繰り返し起こっていてもいいはずのところでした。
侵食の激しいところでは、
そのような運動を認定するのが難しいものでした。
しかし、技術の進歩によって
その認定ができるようになりました。

・冷夏・
いよいよ前期の講義が終わりました。
いつもの夏なら暑くて授業なんかできない
と思える日が来る頃ですが、
今年は、涼しくて助かっています。
農業関係者は困っています。
農作物に影響が出はじめているようです。
梅雨明けもかなり遅れているようです。
かなり心配な状況ですね。