地球の歴史
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Essay■ 1_171 日本最古の岩石 3:原岩年代
Letter■ 前期の終盤・ヒグマの続報
Words ■ 涼しい夏の日々が続きます


(2019.07.18)
 ジルコン年代では、変成を受けた年代と、火成作用で形成されたときの年代が記録されています。それらの年代が持っている意味は、慎重に解釈しなければなりません。

Essay■ 1_171 日本最古の岩石 3:原岩年代

 日本列島で古い石が見つかったという論文の紹介をするシリーズだったのですが、その石の説明をする前に、背景となる造山運動と年代測定の素材であるジルコンについて紹介しました。今回からは、その論文を紹介します。
 2019年2月の地質学雑誌に「島根県津和野地域の舞鶴帯から古原生代18.5億年花崗岩質岩体の発見とその意義」というタイトルで報告されました。著者は、広島大学の木村光佑たちの共同研究です。
 この論文で驚いたのは、舞鶴帯から最古の岩石が見つかったということです。もうひとつは、タイトルの年代の他に、最古の年代をもった岩石が見つかったことが論文では報告されています。プレス発表では「日本最古」という語句が最初にでていますが、なぜそれを論文のタイトルにしなかったのでしょうかね。。
 舞鶴帯は私が以前研究していたところでもあり、親しみを感じていました。この造山帯は、古生代後期以降に形成されたものです。もちろん造山帯ですから、陸を構成していた岩石には、もっと古い時代のものがあってもいのですが、これまで発見されていませんでした。
 舞鶴帯より陸側に、飛騨−隠岐帯があります。飛騨ー隠岐帯は、大陸棚で形成された堆積岩(石灰岩やアルミニュームが多い泥岩など)やリフト帯で活動した火山岩類(アルカリ岩質の火山岩)が見つかっています。また、変成年代として、2.4〜2.5億年前が得られています。これは、変成作用のピークの年代、そして造山運動の最盛期の年代を示していると考えられます。変成岩の原岩のジルコン年代として24億年から17億年前がえられています。
 飛騨−隠岐帯は、24億年前以降の岩石が分布している大陸があり、その海側(大陸棚)には3.5億年前以降に形成された堆積物がありました。そこで2.5億年前ころの造山運動でできたものが残されていることになります。
 舞鶴帯は、古生代末から三畳紀の造山帯で年代として飛騨−隠岐帯と似た時期になります。今回の報告は、舞鶴帯の構成岩石の年代に関するものでした。近接した露頭から3種の岩石の分析をしています。片麻岩、トーナル岩から石英閃緑岩の混在した岩石(ここで花崗岩類と呼びます)と花崗閃緑岩です。片麻岩は花崗閃緑岩が変成をうけたものです。
 論文のタイトルでは、「18.5億年前」と書かれていますが、それはジルコンから求めた変成年代です。片麻岩だけでなく、花崗閃緑岩でもそのような変成年代がえられています。一方、もともと原岩の年代(火成作用の年代)として、片麻岩では25億年前が、花崗岩類と花崗閃緑岩では4億年前(デボン紀前期)の年代がえらました。
 舞鶴帯の岩石の年代と飛騨−隠岐帯の年代には類似してものと、異なったものが含まれています。それは何を意味しているのでしょうか。それは、次回としましょう。


Letter■ 前期の終盤・ヒグマの続報 

・前期の終盤・
前期の講義も残すところ、あと少しとなりました。
教員には、前期が終わってからも
定期試験、採点、評価などの作業や、
入試や保護者に関係した出張も続きます。
とびとびではありますが、校務が続きます。
でも講義が終わるので、精神的にほっとできます。
9月には、長期の野外調査もあります。
私用ですが、数日ですが帰省します。
9月の後期の開始まで、集中して研究できる時期です。
それを励みに、残りの前期の授業と
校務を乗り切れればと思います。

・ヒグマの続報・
わが町のヒグマの続報です。
森林公園の一部には農場があります。
その農場の作物にヒグマによる食害が発生しました。
その結果、やっと捕獲がおこなわれることになりました。
14日に目撃情報が2箇所からあり、
私は、そのうちの一つを車通っています。
時間帯が違っているのでみることはできそうにはありませんが。
火曜日の段階でまだ捕まったというニュースはありません。
広い森林公園で、ひとつの罠で捉えることができるのでしょうか。
あまりに遅く不十分な対応に。
市民はかなり戸惑っているようです。