地球の歴史
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Essay■ 1_170 日本最古の岩石 2:ジルコン
Letter■ 努力と経験・ヒグマ
Words ■ 努力は若者が長け、経験は年配者が長ける


(2019.07.11)
 造山帯の深部のマグマだまりは、花崗岩類が主として分布しています。その花崗岩に含まれているジルコンという鉱物で、年代測定ができます。ジルコンの年代測定には、どのような意味があるのでしょうか。

Essay■ 1_170 日本最古の岩石 2:ジルコン

 南北に走るフォッサマグナで、日本列島は東西に区分され、西を西南日本と呼び、東を東北日本と呼んでいます。また西南日本は、東西に走る中央構造線を境にして、南側(海側)を外帯、北側(大陸側)を内帯と呼んで区分します。
 このうち西南日本内帯は、何度も造山活動が起こっていることが知られています。北側(大陸側)ほど古く岩石の地質体があるのですが、それが新しい時代の地質体の上に、断層でずり上がっているという構造になっています。
 実際に露頭でみると古いものほど断片的になっていて、どのグループ(地質体)に属するのかを、判定するのは難しいものです。その時に、手がかりとなるのが、岩石の種類と年代です。
 まず、岩石の種類ですが、前回、造山帯の花崗岩などの深成岩は、昔のマグマだまりだったという話をしました。造山帯は変動が激しいので、上にあった岩石類が侵食でなくなっていき、マグマだまりが見えることになります。もし、その造山帯が、繰り返し火成活動をおこなっているようなところだと、いろいろな時代の深成岩が見つかることになります。また、花崗岩類は、島弧(大陸)に特徴的な岩石ですので、点々と花崗岩が分布する地域は、かつての島弧の造山帯の深部であったことになります。
 年代測定は、ジルコンと呼ばれる鉱物が見つかれば、一粒でも年代が決められるようになってきました。近年の地質学の科学雑誌は、ジルコン年代による成果の報告が、非常に多くなりました。
 ジルコンは、花崗岩質のマグマから結晶する鉱物です。ジルコン(Zr)という元素が多い鉱物なのですが、その他にウラン(U)も多く含んでいます。ウランは放射性元素で崩壊して鉛(Pb)になります。その放射崩壊を利用して、一点の分析で年代を決めることができます。そして、ジルコンはできると頑丈な鉱物なので、風化や侵食でも残ります。堆積岩中にも見つかり、砕屑性ジルコンの年代測定から、かつて存在したはず花崗岩の年代を知ることができます。また、変成作用にも強く、少々の変成作用では変化しません。ただし変成度が高くなると、縁に新たに結晶が成長したり、縁が再結晶することがあります。そのような部分を測定すると、変成作用の年代を知ることができます。
 つまり、ひとつの岩石から、何粒ものジルコンが取り出せれば、火成作用や変成作用などの事件の記録が、読み取ることができます。ですから、少々変わった花崗岩類が見つかり、そこからジルコンを取り出せれば、いろいろな事件の年代をしることが可能になります。
 その技術を西南日本内帯の小さな露頭の片麻岩に適用されました。すると今まで見つからなかった古い年代と、新たな地帯の分布がわかってきました。それは、次回以降にしましょう。


Letter■ 努力と経験・ヒグマ 

・努力と経験・
ジルコンの年代測定自体は、機械化されているので
今では、なかり簡便に測定できるようになりました。
しかし、試料を見つけるための地質調査や
ジルコンを分離するための手間は、
労力が必要になり、なかなか大変です。
特に地質調査は、古い石を見つけよう思っても
簡単に見るかるものではありません。
長年、調査を続けた結果、
この当たりに分布していそうだとか
この岩石がどうも古そうだとか、という目が必要です。
それなりの経験が必要だということです。
つまりは、科学の成果には、努力と経験が必要だということです。

・ヒグマ・
私が住んでいる街には、隣街にまたがって
大きな道立の森林公園があります。
先日来、その森林公園の中でヒグマが出没しています。
別の森から来た、若い個体です。
現在、この森を縄張りにして、動き回っています。
森の周辺には、いくつもの大学、小・中・高校があります。
学生もクマを目撃しています。
設置したカメラにも何度も写っています。
早く対処して欲しいのですが、
市と道や部署の縄ばりやテタ割行政のためでしょうか。
それとも大きな被害がでないと動かないのでしょうか。
困ったものです。