地球の歴史
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Essay■ 1_169 日本最古の岩石 1:造山運動
Letter■ 天候不順・道内調査
Words ■ 涼しい夏です


(2019.07.04)
 日本最古の岩石を発見したと、2月に報告されました。その内容を紹介していきましょう。最古の岩石がどのようなところにあったのか。その基礎となるところから、はじめていきましょう。

Essay■ 1_169 日本最古の岩石 1:造山運動

 現在、日本には各地で火山があり、活動中の活火山も多数あります。日本列島の火山は、でたらめに分布するのではなく、列をなしていることが特徴です。火山列はいくつかありますが、すべて海溝と平行してあります。ただし、海溝から一定の距離が離れたところに並んでいます。
 日本の火山は、海洋プレートの沈み込みに関係していることがわかっています。火山ができる原理は、沈み込むプレートから水分が絞り出されて、それがマントルの融点を下げてマグマができます。水分が出る位置は圧力に依存しているので、ある深さでマグマができ、その上部の位置が、海溝から少し離れた火山列になります。
 日本列島には活火山だけでなく、活動を停止した火山列もあり、いろいろな時代に活動していたことが分かります。つまり、日本は常に火山列が形成されるような位置、常に沈み込み帯があったことになります。
 古い火山は活動を停止したときから、侵食を受けていきます。古くなればなるほど、侵食の程度は進みます。やがて火山全体が侵食を受けていくことになります。では、もっと侵食を受けると、火山活動を起こしたマグマがあった場所、マグマだまりまで侵食が進んでいきます。
 マグマだまりは、マグマの活動、あるいは火山活動が終わると、そのままゆっくりと冷えていきます。マグマがゆっくりと冷えていくと、大きな結晶からなる深成岩になります。日本列島には深成岩が列をなして分布している地帯がいくつもあります。そのような地帯は、過去の火山列のマグマだまりを見ていることになります。
 深成岩の列の中に、新しい時代の火山が活動していることがあります。そのような火成岩類の分布は、古い時代から現在まで、繰り返しマグマの活動があったこと、沈み込み帯が繰り返し形成されていたことを示しています。
 侵食を受けた火山や陸の砕屑物は、川によって運ばれ、海に堆積します。長く侵食され続けると、堆積岩も多く形成されることになります。古い深成岩だけでなく、古い堆積岩からできた地層も日本列島では見つかっています。いろいろな時代の堆積岩があるということは、常に侵食を受けていることになります。
 常に侵食されるためには、高まりをもった陸地がなければなりません。いろいろな時代の地層があるということは、侵食があっても盛り上がる場であったことになります。隆起運動も何度も起これば、その都度、侵食が起こり地層ができます。
 日本列島は、何度もマグマの列ができ、何度も隆起運動をして、削剥されマグマだまりが露出して、砕屑物から地層ができる場となっています。そのような活動を造山運動と呼び、そのような地帯を造山帯といいます。
 日本列島は古い時代から現在まで、何度も造山運動が起こった地帯となっています。古い造山帯は、侵食を受けるので、その痕跡はだんだん少なくなっていきます。よく探せば痕跡は見つかることがあり、最近、古い岩石が見つかりました。


Letter■ 天候不順・道内調査 

・天候不順・
北海道はここ数日、肌寒い天候が続いています。
先週末に雲の多い天気の中、
前期では、最後の野外調査にでかけていました。
今後は、8月末からの本州の調査まで一段落です。
今年はかなり天候不順で
例年とは異なっているようで、
これもエルニーニョの影響なのでしょう。
調査には天候が影響するので、気になります。

・道内調査・
今年は、道内の調査に力を入れています。
昨年から、少し始めたのですが、
今後も、その方針で続ける予定です。
この大学に赴任してすぐのころは、
道内各地にの調査をしていたのですが、
その後は本州に移しました。
やはり道内の調査は、準備も移動も楽なので
気楽に出かけられるのがいいですね。