地球の歴史
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Essay■ 1_168 グランドキャニオンの不整合 5:クレーター
Letter■ スケーリング則・5月病
Words ■ 北海道は一番いい季節です


(2019.05.16)
 グランドキャニオンの不整合には、クレーターに関する謎を解決するヒントも隠されていました。不整合とクレーターが、どう結びついているのでしょうか。そこには、スノーボールアースが関わっていました。

Essay■ 1_168 グランドキャニオンの不整合 5:クレーター

 カンブリア紀の少し前の時代に、グランドキャニオンなどに見られる大きな時代ギャップをもった不整合は、スノーボールアースの氷河による激しい侵食ためだという報告があることを紹介してきました。陸地の岩石が侵食を受けて、その堆積物が地殻深部に入り込みmマグマをつくる起源物質として再利用されていることになったと考えられています。ジルコンという鉱物の化学組成を用いて検証していました
 論文では不整合の存在の他に、スノーボールアースの氷河の影響を、クレーターの問題についても言及しています。クレーターは、隕石の衝突によってできます。隕石は惑星の材料ですので、惑星形成期には多数の隕石が衝突合体していました。ある程度原始の惑星(地球も含みます)が成長すると、惑星の軌道付近の隕石は、すべて衝突合体してしまいます。
 現在でも、隕石は落下しています。隕石の衝突は偶発的なものですが、大きさを問わなければ、多数の隕石が、今でも地球には落ちてきています。小さな隕石ほど多く、大きな隕石は少なくなっています。しかし、地球創成期は別にすれば、その衝突では大きいものが少なく、小さいものが多いという比率は一定であると考えられます。大気や海洋のない月で、クレーターのサイズと時代ごとの落下頻度の関係が調べれています。
 稀ではあっても、長い時間で考えれば、大きな隕石の衝突も一定の比率で起こったと考えられます。大きなクレーターは、新しいものから古いものまであるはずです。もちろん、クレーターは見つけられるのは、見えるところが主なので、大陸域にものが主となります。海洋地域では、海洋プレートが沈み込んでしまうので、古いものは表面から消えてしまいます。陸地では浸食作用が働くので、古いクレーターは、消されていきます。ですから同じ比率でクレーターが形成されていたとしても、古いものは少なく、新しいものは多くなるはずです。その傾向はカンブリア紀以降のクレーターで検討できます。
 論文では、25億年前まで遡ってクレーターの形成年代を調べています。カンブリア紀以前には、巨大なクレーター(直径100km以上)のものが2個見つかるだけでした。現在からカンブリア紀までの統計的推定からは、カンブリア紀以前にももっと見つかっていていいはずなのですが、見つからないということになります。つまり、約6億年前以前に形成されていたクレーターがなくなっていることになります。この問題も、陸地の巨大氷河がクレーターを削り取ってしまえば、答えとなります。
 しかし、スノーボールアースの考えにも問題があります。それは、スノーボールアースの氷河期の終わり(約6億3500万年前)とカンブリア紀始まり(5億4100万年前)までの間に、1億年近い時間差があることです。カンブリア紀の生物が爆発的増える現象(カンブリアの大爆発)は、生物の進化なので時間が必要でしょうが、堆積物はそれだけの時間があれば、大量に形成されているはずで、その期間の堆積物が少ないのが問題となっています。著者たちもいっているのように、今後の課題でしょう。


Letter■ スケーリング則・5月病 

・スケーリング則・
隕石の落下の頻度は、小さいものが多く、
大きいものが少ない、といいました。
同じような傾向は、
多くの自然現象で見られるものです。
地震のマグニチュードとその発生頻度、
雪や雨の降雨量とその頻度、
自然災害の規模とその頻度
などがあります。
社会現象にも似たものが見られます。
株価の変動幅の大きさとその頻度、
事故の規模の大きさとその頻度など
いろいろなもので、小さくものは多く
大きものは少ない、という現象が挙げられます。
このような現象で、関係が明らかにされたものは
スケーリング則と呼ばれ、現象の解明のヒントなります。

・5月病・
ゴールデンウィークも終わり、
私は半分の期間で、研究に専念できる時間があり
ありがたかったのですが、
授業がある日常に復帰するのに少々時間がかかりました。
少々5月病になってしまっていたようです。
学生たちも、連休から1周間経って、
やっと平常的な気分になってきたようです。
中には5月病に悩んでいる学生もいるでしょうが、
なんとか立ち直って欲しいものです。