地球の歴史
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Essay■ 1_147 隕石と大気 2:宇宙塵
Letter■ 森へ行くと・冪乗則
Words ■ リフレッシュしています


(2016.09.01)
 隕石の落下は、だれもがどこかであったことを聞いて知っています。映像でみた人も多いでしょう。地球全体とすると、よくある現象に思えます。しかし、地層から見つかる隕石は稀です。この違いは何によるものなのでしょうか。

Essay■ 1_147 隕石と大気 2:宇宙塵

 隕石がどの程度の頻度で落下しているのかを考えていきましょう。現在の地球での隕石の落下頻度は、かなり多く思えます。もし人の住んでいるところに隕石が落ちてくれば、ニュースになります。ロシアに落ちた隕石は有名ですし、日本にも人家に落ちた隕石が、ニュースになったことは何度かありました。
 ロシアの隕石のように人が住んでいるところに大きな隕石が落ちれば、今では、どこかでだれかが画像や動画を撮影しています。それをメディアが大々的に流がれる時代になりました。そのような状況が、隕石落下の頻度を実際より多く思わせている感があります。
 ひとつの地域に限れば、隕石落下は稀な現象です。しかし、地球全体でみれば、人の住まないところの方が圧倒的に広くなり、比率を考えると、年間にかなりの数の隕石が落ちてきていると推測されます。多分過去も、同程度の頻度で落下していたはずです。
 地球表層全体として考えれば、隕石の落下は稀なことではなさそうです。しかし、地層中から隕石がみつかることは稀なことです。地層中の隕石など聞いたことがある人は、専門家以外にはいないでしょう。現在の地球に落下している隕石の頻度と地層中に見つかる隕石の頻度には、どちらも隕石の落下ですが、どうも違いがありそうです。
 これは少し考えればわかることなのですが、それは私たちがみている地層面積と、現在情報収集できる地表の面積の違いがあるからです。
 地球表層全体として見ると隕石は、毎年多数落ちていると言えるかもしれません。またすでに落ちているものを見つけることもできます。南極のように隕石の集積メカニズムがあるところや、砂漠のように隕石が見つけやすい場所からは、多数の隕石が発見されています。そのため、最近隕石は市場に多数出まわるようになってきました。このようなことから、隕石は珍しいものではあるのですが、個人でも簡単に手にできるほどの存在になってきました。
 またサイズを問わなければ、チリのようなサイズ(宇宙塵と呼ばれる)のものなら、結構多数落ちてきています。人工衛星の観察によれは、年間4万トンも降り注いでいると見積もられています。特に金属製の宇宙塵は比較的簡単に見つけることができます。しかし、宇宙塵は顕微鏡サイズの隕石です。
 一方、地層から見つける場合はそうもいきません。ある地層のある断面を考えてみましょう。現在見えている地層は、風化、侵食作用によって、ある断面が地表に露出しているものです。ですから、隕石が表面に出ている期間は限られています。また、地層の堆積している場(堆積盆といいます)全体の面積で、ある断面に隕石が見つかるかということです。現在の堆積盆に線を引いて、そこを切ってみた時、その断面に隕石が見つかるかどうかです。断面は露頭の長さです。多分そんなに長い断面ではないはずです。なかなか難しいはずです。可能性は、非常に稀なことだと推定できます。ですから地層断面から見つかる隕石は、非常に稀なものといえます。
 ただし、隕石が小さく、宇宙塵のようになれば、見つかる頻度は大きくなっていきそうです。あまりに小さいと今度は引き出せる情報は限られていきます。まあ、それは実際によみとった事例をみていけばいいのでしょう。
 隕石の痕跡は、どの時代まで見つかっているのでしょうか。長々と述べてきましたが、ここまでが今回のシリーズの前置きです。世界最古の微小隕石の発見と、そこから読み取られた報告を紹介するシリーズです。


Letter■ 森へ行くと・冪乗則 

・森へ行くと・
本エッセイが発行されているいる時は、
私は、和歌山の方で調査をしています。
このエッセイはの発行は予約をしていたものです。
天候が不安なのですが、こればかりはいつものことで
心配してもしょうがありません。
ただいって、そこで臨機応変に、考えていくしかありません。
野外調査にはいくつもの目的を持ってでかけますが、
自然の中に入り気分転換できることも隠れた重要な目的です。
私は、森の中に入りるとホッとします。
先日も短い調査で、森にはいったのですが、
緑の中の林道を車で走っていると
ホッとした気分になり癒やされます。
今回の調査でも。味わえるでしょうか。

・冪乗則・
小さいものは多く、大きいものは少ないという規則性があります。
このような規則は指数関数になっているため
冪乗則(べきじょうそく)と呼ばれています。
隕石の落下の頻度も冪乗則に従っています。
大きな隕石の落下はめったにありません。
小さくなれば頻度は大きくなり、
宇宙塵のようなものになれば
かなり当たり前のことになります。
地震のマグニチュードの頻度、
生物のスケーリング則(アロメトリー)も冪乗則です。
また自然界だけでなく、所得の分布などのように、
人間界にもこのような規則性が当てはまります。
不思議な規則性ですね。