地球の歴史
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Essay■ 1_138 地球の水の起源 4:ガス捕獲説
Letter■ 研究は人がするもの・除雪
Words ■ 北海道は本格的な積雪なりました


(2014.12.11)
 これまで、地球の水の起源に関する2つの説をみてきました。3つ目の説として、ガス捕獲説を紹介します。この説にも根拠はあるのですが、少々立ち位置が違ったものです。

Essay■ 1_138 地球の水の起源 4:ガス捕獲説

 地球の水の起源として、3つの説があります。かつては脱ガス説が主流でしたが、近年はレイトベニア説が有力視されています。ここまで、紹介してきました。今回からは、最後となった3つ目のガス捕獲説についてみてきましょう。
 ガス捕獲説とは、どのようなものでしょうか。この説には、最近、新たな証拠による論文が報告されました。まだ、受け入れられるかどうかはよくわかりません。ただし、従来の説に対立するものではなさそうです。
 脱ガス説もレイトベニア説も、いずれも、太陽系が形成されたときにあったガスが水の素材となります。2つの説の違いは、水をどのようにして地球にもたらすかと点でした。そもそも水は、太陽系の材料物質中に存在してたところからスタートしています。
 太陽系のガスの成分は、水素、ヘリウムを主として、続いて酸素、炭素という順になっています。水素と酸素が反応すれば、簡単にH2Oが、それも大量にできることになります。ですから、太陽系内では、H2Oは、存在しているものとして考えられていました。
 しかしそこには、実は別の問題が隠されていました。すべての水が本当に太陽系で合成され、材料物質にもたらされたのかという問題です。上で示した太陽系の元素の存在度は、太陽系固有の特別なものではなく、宇宙空間では同様の元素類がごく普通であることがわかっています。つまり、水素も酸素も、宇宙空間にはたくさんあり、H2Oがたくさんできる可能性は、どこにでもあるのです。
 太陽系ができる前、ガスが宇宙空間に集まっているところ(分子雲)で、すでにH2Oができていてもいいわけです。実際の分子雲の観測でも、H2O分子は見つかっています。これまでどのようにH2Oが地球にもたらされたのかが問題とされていたのですが、いつどこでH2Oができたかが見過ごされてきました。
 もし分子雲内ですでにH2Oができていて、それが原始太陽系円盤に取り込まれたとすると、太陽系の材料の中に、すでにH2Oが存在する環境であったことになります。一方、原始太陽系円盤内の形成であれば、H2Oは他の材料物質と同時期にできたのですが、場所ごと(軌道ごと)に、形成されるH2Oの量は違ってくるという問題も生じます。
 いつH2Oができたのかという問題に対して、アメリカのウッズホール海洋研究所のサラフィン(A. R. Sarafian)たちは、分子雲の時にH2Oができていた可能性を示しました。その説明は、次回としましょう。


Letter■ 研究は人がするもの・除雪 

・研究は人がするもの・
一つの論文が提出されたとします。
その論文には証拠も論理性があったとしても
受け入れられるかどうかはわかりません。
同業者や近縁領域の研究者が
受け入れるか、時間経過、議論経過とともに
判断されていきます。
その判断は、近縁領域の研究者にとっては、
今までの自分の考えや説に反しなければ
わざわざ否定をするような労力を
はらわないかもしれません。
しかし同業者(同領域の研究者)にとっては
大きな問題となり、議論を呼ぶことになります。
今回のように、多くの説の前段階の論文であれば、
その説を受け入れても
自分の考えには影響がないという場合もあるでしょう。
そうなるとあまり議論が起こらないかもしれません。
ということは、その論文に関する審議や検討が
なおざりになることがあるかもしれません。
本当は議論して欲しいのですが、
研究をするのは、人ですからね。

・除雪・
北海道は先週末あたりから
積雪が毎日のようにありました。
冷え込みも厳しいものでした。
昨朝は自宅の前の道路にも除雪が入りました。
今シーズン初めてのことでした。
例年よりは、かなり早い除雪のような気がします。
このまま、根雪になることがないことを願っています。
なりそうな雰囲気なので少々心配ですが。