Essay■　1_130　宇宙の年齢 3：最古の天体
Letter■　種族・台風の影響
Words ■　台風一過

Essay■　1_130　宇宙の年齢 3：最古の天体

　前回、宇宙の年齢に関して、いくつか重要は観測がなされたといいましたが、宇宙の成分構成を紹介する前に、古い天体の発見に関する情報を紹介しておきましょう。
　最近、古い天体が、いくつか発見されています。古い天体は遠くあります。それは、昔、天体を出た光が、今の地球に届くには、遠くにある必要があります。ですから、古い天体探しは遠くの天体を探すことでした。一番古い天体は、132億年でした。ところが近年、身近なところから、もっと古い天体が、２つも見つかりました。
　ひとつは、私たちの銀河系の中にある「SMSS J031300.36-670839.3」（SM0313と略されることがあります）という星で、太陽系から約6000光年ほどのところにある星です。非常に近いところにある天体なので、調べやすく観測には適しています。
　なぜ、銀河系内の天体から、宇宙の年齢がわかるのでしょうか。実は、このタイプの天体は、以前から古いと考えられていたのですが、観測によって正確にそれがわかるようになったのです。
　ビックバンで形成された元素は、水素とヘリウムだけなので、最初の星（ファーストスターと呼ばれる）は、これらの元素からできた巨大なものです。大きい星ほど、寿命が短く、すぐに超新星爆発をして、星としての一生を終えてしまいます。超新星爆発の時に、重い元素をばらまきます。
　星の内部での核融合で、ヘリウムより重い元素が形成され、超新星爆発でもさらに重い元素が合成されます。観測された天体は、炭素、マグネシウム、カルシウムなどの元素を持っていますが、もっと重い元素はほとんと含んでいません。今回見つかった天体は、宇宙誕生直後にできたファーストスターで合成された元素のガスを材料に誕生したことがわかってきました。そしてファーストスター自体の様子もわかってきました。
　このような天体は、宇宙の初期に形成された種族IIと呼ばる天体です。種族IIの星は、銀河の周辺にたくさんあることがわかっていたのですが、その実態がやっと解明されてきたのです。種族IIの星は、宇宙ができて1億年ほど後の天体ではないかと推定されていますが、年齢はまだ正確には決まっていません。
　もう一つは、HD 140283で「メトシェラ」と呼ばれているもので、地球から約190光年のところにあります。メトシェラは、もともとは私たちの銀河の周辺（ハローとよばれています）にあった小さな銀河（矮小銀河）が、私たちの銀河に衝突したとき、私たちの銀河に取り込まれたと考えられています。メトシェラは、秒速169.0kmで太陽系に近づく運動（固有運動）をしています。この運動が正確に決まると、星の年齢を決める精度が上がります。
　最初の年齢推定では、160億年とされていました。その後、ハッブル宇宙望遠鏡でこの天体の固有運動を詳しく調べたところ、年齢は144.6億年（±8.0億年）という推定値がだされました。少々誤差が大きいのですが、ある程度の精度をもって、もっとも古い年齢がでたことになります。
　宇宙の推定年齢の138億年より、星に年齢が古いので、論理的に矛盾しています。ということは、どちらかの推定が間違っているか、両方間違っているかになります。
　天体の正確な年齢を決めるのは非常に難しいのですが、この天体はなんとか測定することができ、誤差の範囲でもっとも古い天体とみなせることで、観測と宇宙の理論からの年齢と矛盾はないことを示しています。
　そんな非常に星が、身近な銀河系内や銀河の近くにあることがわかってきました。
　しかし、やはり直接宇宙の年齢を限定する方法が期待されます。それが宇宙の背景放射を利用した方法です。次回としましょう。

Letter■　種族・台風の影響　

・種族・
恒星の分類で種族というものがあります。
種族Iは、重い元素（金属とも呼ばれる）を含む天体で
多くの天体がこれになります。
新しい世代の星で、銀河の円盤の部分にありますす。
種族IIは、古い天体で、寿命が長く
重い元素をあまり含まない天体です。
銀河の周辺にあります。
また最近では種族IIIというもの提唱されています。
種族IIIは、宇宙の第一世代の天体で、
仮説の上での天体でまだ発見されていません。

・台風の影響・
台風の影響はいかがだったでしょうか。
今回の台風は、進みが非常に遅く
長い天候不順と各地に大雨をもたらしました。
私は、週末学会があり、それを主催する側にいたのですが
会期中はよかったのですが、
学会後の巡検や帰宅の便に台風の影響がでました。
無事、帰宅されたのでほっとしています。
いよいよお盆です。