地球の歴史
表紙に戻る

Essay■ 1_124 最古の認定 1:最古の信頼性
Letter■ 記載・めまぐるしい天気
Words ■ 淡々とした作業がほとんどの研究の時間を占める


(2014.05.01)
 地球で最古の物質の年代が決められて、10年以上が経過しています。ただし、その年代の信憑性が検証されたわけではなく、一応の仮説として存在していることになります。この年代をもう一歩進めるためには、年代の信憑性を示すことが必要です。それができれば、同様の手法のデータへの信頼性も増すはずです。

Essay■ 1_124 最古の認定 1:最古の信頼性

 地球で最古の岩石は、約40億年前のものです。最古のものが、岩石という形になっていて、岩石自体ができた時代を示しています。ですから、岩石から得られた情報は、その時代の情報であることになります。地球の材料である隕石の年代は、約45.6億年前であることがわかっています。その間、約5.6億年間が、資料がない、調べられない、「ミッシングリンク」となります。
 ところが、間を埋める年代をもつ物質はあります。それは、地球以外の天体である月から採取された岩石です。45億年前のものまであります。これはこれで、重要なデータですが、地球の歴史を調べるには、やはり地球で最古の物質探しは続くでしょう。そして報告はそれなりのニュースで伝えられるでしょう。
 技術の進歩によって、非常に小さな鉱物の粒一個でも年代が測定できるようになりました。20世紀終わり頃に出てきた技術で、21世紀にはいる頃になると、その装置(SHRIMPと呼ばれる装置)は普及して、各地で微小な物質の年代測定がなされました。その一環で、最古ハンターたちも動き出しました。その結果、40億年前後の年代の岩石が、いくつかの地域で見つかるようになりました。
 そんなデータラッシュの中でも、2001年は、地球の歴史を探る上で研究史上のひとつのマイルストーンになる時代でした。
 40億年前よりかなり古い時代を示す物質が発見されました。著者も対象地域が違う2つの論文が、同じ雑誌に報告されました。1編は42.8億年前に海の証拠があったいう論文で、他方は44億年前の鉱物の発見の論文でした。両方とも重大な論文でした。
 もともと西オーストラリアには、古い鉱物を含む堆積岩あることが知られていました。マーチソン地方では、約30億年前の堆積岩の中のジルコンという鉱物が古い年代を示すことが知られていました。それまでは42億7600万年前の年代が知られていました。この論文では、42.8億年前の年代で、少し古くなりました。この論文の重要な指摘は、そのジルコンが堆積岩が溶けてできたマグマに由来するということでした。
 もうひとつの論文では、西オーストラリアのジャックヒルというところで、30.6億年前にたまった堆積岩の礫から、44億0400万年前のジルコンという鉱物が発見されました。かなり古い時代を示しました。さらにこちらの論文では、海の痕跡があるという報告がなされていました。
 堆積岩起源のマグマも海の痕跡も興味があるのですが、その話は以前にも何度か紹介した(「1_5 「最古のもの」より古いもの」や「1_12 最初の固体」などを参照ください)ので、ここでは省きましょう。
 いずれの論文の年代を求めたのは、ジルコンという鉱物でした。ジルコンは、頑丈な鉱物で、一度できると風化や変成作用にも、かなり耐えることが知られています。ですから、10億年も新しい時代の堆積岩の中でも、昔の年代を保存していたと考えられています。その年代は、本当に大丈夫でしょうか。
 隕石のように、宇宙空間で、長年風化や変成作用を受けないような状態で保存され、最近地球の落ちてきたのであれば、年代が変化することなく、保存されていると考えられます。
 しかし、地球の表層の岩石は、いろいろな変動を受けるはずです。それも古くなればなるほど、さまざまな変動を受けているはずです。そもそも堆積岩の中にあった砂粒です。そして堆積岩自体も、30億年間も地球にあり、変動を受けてきたものです。そんな堆積岩の中のジルコンで、その中の年代を表す成分が、変化や移動していないという保証はあるのでしょうか。それは重要な問題です。たとえ年代正しいだろうという気持ちがあって、検証されなければ、正しいといえません。その検証に関する報告が、2014年2月下旬になされました。次回、それを紹介しましょう。


Letter■ 記載・めまぐるしい天気 

・記載・
年代測定は、地球最古や本邦最古などがつくよう値なら
学会や世間でもニュースになります。
ところが、研究者が調べている年代は、
大部分、ニュースになることのない
当たり前の年代値です。
それでも、調べなくてはならないのです。
だいたいこの年代と推定されていても、
その推定を検証する必要があります。
検証や確認作業の積み重ね、つまり記載が、
科学には不可欠なものになります。
そんな記載の蓄積から、
あるとき大発見が生まれるのです。
最古を追っていた人も、
一度は報われたとしても、
2度も3度もホームランを打てる人はいません。
ですから、誰もが淡々と
当たり前の年代を記載していくことになります。
科学の多くの時間は、
記載や確認に費やされているはずです。

・めまぐるしい天気・
ゴールデンウィークの半ばですが、
皆さんは、何か計画がありますか。
私の大学は暦通りの休日ですから、
週末から4連休になります。
しかし、我が家は、特別な計画はなしです。
子ども達がクラブや試合などで毎日でているため、
家族で出かけることはできません。
まあ、合間をみて、食事に行くくらいでしょうか。
これまで北海道は、いい天気が続いています。
雨がほとんど降らない春の天気でした。
週の初めは寒い日がありました。
昨日当たりから暖かい、いや蒸し暑い天気となっています。
めまぐるしく天気が変化しています。