地球の歴史
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Essay■ 1_122 年代区分 1:境界の決定
Letter■ 最新年代層序表・電子書籍
Words ■ いよいよ3月。本州では梅のシーズンでしょうか。北国は雪です。 


(2014.03.06)
 このエッセイでは、何度も新生代の年代区分について取り上げました。第四紀や第三紀の年代区分は、廃止や復活などで混乱し議論がされている状態でした。現在では、それらの問題が決着しましたので、紹介していきます。

Essay■ 1_122 年代区分 1:境界の決定

 新生代の時代境界にいろいろな問題があったことは、このエッセイでは何度も紹介しました。一番最近の「1_88 第四紀問題3:境界変化」(2009.12.17)では、第四紀の決着がしたことと、第三紀の日本語の正式名称が未定であることを紹介しました。2010年から2012年にかけて、それらの問題も解決してきました。
 まずは、今までの経緯からはじめましょう。
 ことの発端は、国際層序委員会(ICSの)意向を受けてまとめられた"A geological time scale 1989"という本で、第四紀(Quaternary)なくすという方針が示されました。そのときは、あまり問題として顕在化してなかったのですが、2005年春に発行された"A Geological Time Scale 2004"では、第四紀(Quaternary)をなくし新第三紀(Neogene、ネオジン)に併合し、第三紀という区分もなくして、古第三紀(Paleogene、パレオジン)と新第三紀にすると決定をしました。それに伴って、第四紀は学術論文では使えないという方針が、強く打ち出されました。
 確かに第四紀と第三紀の時代境界は不確かなところがありました。そして、もし第四紀をなくすのではあれば、新生代の下の階層は第三紀だけになり、その下位に古第三紀と新第三紀が位置づくという不自然なものとなります。第四紀がなくると第三紀存在の意味も薄れていきます。そんな理由から第四紀と第三紀を廃止するという方向に進んでいました。
 ところが、第四紀の廃止については、国際的、学際的にも大いに議論がわき起こりました。第四紀は、地質学だけでなく、多くの学問分野で定着している術語であり、地質学の分野で廃止をするということは、他の学問分野との整合性がつかなくなります。地質学の関連学会内部でも、いろいろな反対意見がでてきました。
 もし、正式に廃止が決定されると、今後、学術論文では使用できないない術語となります。非常に影響の大きな決定でもありました。
 議論中は、第四紀の廃止については、ペンディングとなり、使用禁止は一時解除され、公式ではないが使用できるという状態になりました。
 最終的に、2009年6月29日のIUGSの理事会は、ICSが提案した第四紀の下限を258万8000年前とすることを承認しました。これによって、第四紀が再定義され、いったん廃止されましたが復活しました。今後の学術論文でも正式名称として使用することができるようになりました。
 第三紀は廃止されたままで、新生代は、パレオジンとネオジン、第四紀という3つの区分になったのです。問題は、日本の正式名称をどうするかということは、まだ未定でした。いくつかの考え、意見はでてきたのですが、2010年1月には日本地質学会が正式な日本名称とともに、第四紀が新しくなり、第三紀は廃止されことが報道されました。
 時代名称について、次回紹介します。


Letter■ 最新年代層序表・電子書籍 

・最新年代層序表・
第四紀と第三紀に関する日本地質学会のニュース記事は
http://www.geosociety.jp/name/content0057.html
に紹介されています。
そして、すべての時代を含めた新しい時代名称は、
2014年1月改訂版は
http://www.geosociety.jp/name/content0062.html
に公開されています。
今後、日本の正式な学術書や教科書類は
この定義に従って表記されることになります。
ただし、2014年版はICSの2013年1月版国際年代層序表
の日本語版となります。

・電子書籍・
私は、知らなかったのですが、
Elsevierから
”The Geologic Time Scale 2012 2-Volume Set, 1st Edition"
という本がでています。
2分冊になっている本です。
先日、早速注文したのですが、
印刷版も電子版も115.00$となっています。
しかし、よくみるとセットで購入すると、割引があり、
138$となっています。
先日注文して、電子版を早速ダンロードしました。
重くもなく場所も取らないので助かります。