地球の歴史
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Essay■ 1_112 23億年前の事件 2:オスミウム
Letter■ 雪まつり・一般入試
Words ■ 事件と因果は重要な問題だ


(2013.02.07)
  23億年前の地球は、いろいろな大事件が連続して起こりました。大事件はどのような関係があるのでしょうか。そして、その関係は、どうすれば読み取ることができるのでしょうか。新しい手法で、その関係が探られました。

Essay■ 1_112 23億年前の事件 2:オスミウム

 23億年前頃に起こった酸素の急増、全球凍結、真核生物誕生(20億年前)という大事件は、連続的に、あるいは同時に起こっています。事件には、どのような因果関係があったのでしょうか。まずは、年代を正確に決めたいところです。
  全球凍結は氷河堆積物の、真核生物の誕生は化石を含む地層の年代測定をそれぞれすればいいわけですが。しかし、酸素の急増はどのように調べればいいのでしょうか。大気のできごとですが、なかなか難しい課題でした。
  東京大学の関根さんたちのグループは、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)誌に、あるアイディアを示しました。その論文は、2011年10月に発表されました。
Osmium evidence for synchronicity between a rise in atmospheric oxygen and Palaeoproterozoic deglaciation(大気の酸素の増加と前期原生代の氷河期回復の同時性に関するオスミウムの証拠)
というタイトルでした。
  関根さんたちは、オスミウム(Os)という元素の同位体(同じ元素だが質量の違う原子)を用いて、大気中の酸素の濃度を調べています。
  オスミウムは白金族の元素のひとつです。白金族の元素は、もともと非常に少ない金属です。安定しているので、水とは反応しくく、酸や塩基に溶けにくいもので、貴金属とよばれています。ところが、オスミウムは、白金族の中で、最も酸化されやすく、空気中においておくだけでと、酸化オスミウム(猛毒)になってしまいます。オスミウムは酸素と反応しやすい元素なのです。
  岩石に含まれているオスミウムは、大気中の酸素が増えると、水に溶けやすいという性質があります。その性質によって、酸素が増えると、オスミウムは川から海に運ばれ、堆積物にたまっていきます。酸素が少ないと、大陸から海に運ばれることなく、海底の堆積物はオスミウムが少ないままになります。オスミウムの濃度から、大気中の酸素濃度と大陸地殻の寄与が、定性的ですが推定できます。
  たとえ量が少なくても、大気中の酸素の濃度を知ることができます。オスミウムには、レニウム(Re)の放射壊変からできる同位体(187Os→187Re)が含まれています。レニウムには安定同位体より放射性同位体のほうが多く(62.6%)なっています。放射性同位体の半減期は、412億年なので、古い岩石や隕石の年代測定に応用されています。
  レニウムは大陸地殻に多く含まれるので、放射壊変に由来するオスミウムも大陸地殻の岩石には、古いほど多くなります。一方、マントルから由来するマグマは、放射壊変に由来するオスミウムが少なくなります。海水には海嶺の火山活動に由来するオスミウムがありますが、放射性起源のものは少なくなっています。
  その関係を利用して、大陸起源かマントル起源かを判別することができます。187Os/188Os比(分母のオスミウム188は安定同位体で含まれる比率も比較的多い)が、大きければ大陸起源で、小さければマントル起源とみなせます。
  濃度の他にも、堆積物中の同位体組成(187Os/188Os比)からも、大気の酸素濃度が、間接的ですがわかることになります。両者を利用すれば、堆積物の大陸地殻の寄与、そこから大気中の酸素濃度が推定可能となります。
  では、関根さんたちは、どこで、どのようなことを調べ、何を明らかにしたのでしょうか。それは次回としましょう。


Letter■ 雪まつり・一般入試 

・雪まつり・
北海道は暖か日が続いた後、
ドカ雪が降りました。
除雪が入ったのはいいのですが、
ツルツルに凍った路面が新雪の中にでていて、
危険な道路状況になっていました。
そのため、いたるとこで衝突事故や
雪に突っ込む車もありました。
救急車のサイレンも頻繁に聞きました。
札幌ではドカ雪の日に、
雪まつりが開幕しました。
雪まつりは北海道の冬の最大のイベントとなりました。
晴れれば暖かさで雪像が溶けることを心配し
寒ければ観客の動員が心配です。
成功するといいのですが。

・一般入試・
大学は、定期試験が終わり、
今週は大学の一般入試の真っ最中です。
高卒者の人口が少しずつ減っているので
どの大学も苦戦が強いられています。
生き残りをかけた戦いです。
しかし、大学とはそもそも学問を身につける場で、
教職員も学問を進め、伝えるために専心すべきのはずです。
しかし、今は大学間の競争に勝つことに
多くの時間がさかれています。
これも、しかたがないことなんでしょうね。