地球の歴史
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Essay■ 1_98 60Fe:太陽系最古の物質2
Letter■ 秋風・ジオパーク
Words ■ 秋風はいつまで吹き続けるのか


(2010.09.16)
  太陽系最古の物質とは、隕石の中のCAIから求められた年代によるものです。その報告にはいくつかの問題を生じそうです。一つは、前回紹介しましたが、以前のデータとの整合性です。もう一つは、この年代が正しいとすると、太陽系の形成スピードの問題が起こります。


Essay■ 1_98 60Fe:太陽系最古の物質2

 NWA 2364という炭素質隕石の中にあるカルシウム・アルミニウム包有物(CAIと呼ばれている)で、45億6820万年前という年代が得られたということを前回紹介しました。その年代は、従来の隕石の年代より、「最大で約200万年(30万〜190万年の間)まで遡る」ことになると伝えています。その解釈には、従来から得られている年代と照合すると、矛盾があることを前回紹介しました。そのほかにも問題があります。
  NWA 2364のCAIの鉛同位体年代が、45億6820万年前となり、従来の隕石の年代より古くました。その年代が正しいとすると、200万年遡ることになります。すると問題が生じます。
  その問題とは、原始太陽系ガスが形成されてどれくらい後に太陽系形成が始まったかという時間に関係します。原始太陽系ガスは、別の恒星の超新星爆発によって形成されます。その超新星爆発では、さまざまな核種の合成が起こり、非常に半減期(放射壊変によってもとの量が半分になる時間)の短いものもあります。もし隕石に、半減期の短い核種が含まれていたら、超新星爆発から固体物質の凝縮までの期間が短くなります。核種を限定し、測定することで、その期間を推定することできます。従来の推定と、今回の年代が、矛盾がないかが問題となります。
  質量数26のアルミニュウム(26Alと書く、半減期72万年)が、隕石から見つかっています。それらがなくなる前に固体が形成されなければなりません。年代が遡れば、26Alが取り込まれる可能性は大きくなります。形成年代が早まるのは問題ないわけです。
  しかし、鉄の放射性核種、60Fe(半減期150万年)の値との矛盾がでてきます。隕石の中の60Feの量からは、200万年ころに固体形成されたと考えられています。それが200万年遡るともっと大量の60Feがあることにり、誤差ではすまなくなり、矛盾をきたします。
  この問題に対して、ブービエは、太陽系に近いところで別の超新星爆発あり、それがFeを含む重金属を撒き散らしという考えを述べています。そうでも考えないと、両者の矛盾が説明できないからです。
  この説明には、少々無理がありそうです。太陽系形成のために、恒星がひとつ超新星爆発しています。その近くで、そのすぐ後に、別の恒星が超新星爆発するというのは、確率的に非常に低く、それを問題解決の説明にするのは、やはり科学的にはあまり信じられないことになります。
  つまりは、これらの事実をうまく説明するためには、まだまだ情報、つまり研究が足りないようです。この年代値の正誤も、説明の可不可もこれからの研究が答えを出すことでしょう。


Letter■ 秋風・ジオパーク 

・秋風・
一気に涼しくなりました。
こちらです、13日月曜日から
秋風が吹き出しました。
涼しくて過ごしやすくなりました。
北海道に長くいるせいでしょうか、
秋風が吹くと、長くて暗くて寒い冬がすぐ来るので
寂しさばかりが募ります。
しかし、四国では、もっと長く秋を楽しめるはずです。
秋の夜長を楽しんでいきましょう。
秋祭りもいろいろありそうですから。

・ジオパーク・
来月は室戸岬周辺を調査する予定でした。
すると14日のニュースで
日本ジオパーク委員会が世界ジオパークネットワークに
室戸を加盟申請したそうです。
結論は来年10月に下るそうです。
今年の10月には昨年申請した
山陰海岸(京都府、兵庫県、鳥取県)の
最終審査の結果が出ます。
経済効果ばかりを考えていると
うまくいかないような気もします。
加盟しても、どう運営維持をするかも
なかなか大変でしょうが、
始めなければなりませんからね。