地球の歴史
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Essay■ 1_97 CAI:太陽系最古の物質1
Letter■ 縦断道・隕石収集
Words ■ 現在、四国を調査中です


(2010.09.09)
  最近、最古のもののニュースが続いています。その中のひとつである太陽系最古の物質を、今回は紹介します。最古の年代は、アフリカから見つかった隕石のある部分から見つかりました。でも、いくつか問題がある報告だと思っています。


Essay■ 1_97 CAI:太陽系最古の物質1

 太陽系最古の物質が見つかりました。そのニュースは、イギリスの科学雑誌Natureの姉妹誌のNature Geoscienceの2010年08月22日号に掲載されました。アリゾナ州立大学のブービエ(Audrey Bouvier)とワダワ(AMeenakshi Wadhwa)が報告しました。
  その報告によると、隕石の中にある物質の年代が、45億6820万年前なったということです。その年代は、今まで最古であった隕石の年代より、最大で約200万年(30万〜190万年の間)まで遡ることになると伝えています。
  太陽系のはじまりは、一つ前の恒星が超新星爆発でばら撒まかれた物質の集まっているところ(原始太陽系ガス)が舞台になります。何らかの原因で原始太陽系ガスの収縮が始まり、中心部に原始太陽ができます。原始太陽ができた頃、周辺のガス全体がいったん高温なります。
  高温になった時、ほとんどすべての物質は一度溶融して均質化されます。その後温度が下がりはじめて、固体物質が形成されていきます。最初は高温で凝縮する物質ができます。それは、カルシウムとアルミニウムに富む物質で、「カルシウム・アルミニウム包有物(calcium aluminium-rich inclusions、CAIと略されています)」と呼ばれています。
  CAIは、一つの鉱物からできているわけではなく、スピネル、ペロフスカイト、アノーサイト(長石の一種)などの小さな鉱物の集合物です。その物質が太陽系で手に入る最古のものとなります。その物質で、正確に年代測定すれば、最古の年代が求められることになります。
  今回分析されたのは、2004年にモロッコで発見された1.5kgの「NWA 2364(Northwest Africa 2364の略)」と名づけられた隕石でした。この隕石は、太陽系のはじまりに形成された原始的なもので、炭素質コンドライト(CV3)というタイプに分類されています。もともと小惑星帯をただよっていたものが、地球に落下したものです。
  ブービエらはNWA 2364のCAIの鉛同位体組成を分析しました。その鉛同位体組成から年代を計算したところ、45億6820万年前という値を得たのです。地球や太陽系の形成の45億年前という古さに比べれば、年代が200万年遡ったところで、大きな問題はないように思われますが、実は問題があるのです。
  私が以前、論文をまとめていたとき、もっと古い年代データがありました。当時は、同じCV3タイプの隕石、アエンデ(Allende)のCAIで、年代測定が多数されていて、平均すると45億6600万年前(Manhes, et al., 1988)の年代にあっています。年代データの誤差は、300万から700万年で、最古のものは45億6900万年前(Ireland et al., 1990)が報告されていました。ですから、ブービエらの年代は、最古ではないはずです。この論文を手に入れていないので、この年代値が最古とされた理由はよく分かりません。まだ他にも問題があります。それについては、次回としましょう。


Letter■ 縦断道・隕石収集 

・縦断道・
このマガジンがお手元に届く頃、
私は、調査に出ています。
四国山地沿いに東西に縦断する道があります。
行きは、国道439号線で
剣山のふもとの見ノ越という峠を越えます。
その南に土佐中街道とよばれる
阿南から高知まで続く縦断道が
もう一本あります。
帰りはそちらを通る予定をしています。
天気であればいいのですが。
こればっかりは、
人には如何ともし難いものです。
空まかせです。

・隕石収集・
博物館にいるころ、
隕石の収集を担当していました。
できるだすべての種類を収集するというので、
試料やデータも集めました。
手に入りにくいものが、早くに手に入ったので、
後の資料収集は比較的楽でした。
その集大成として、目録も作成しました。
その後、隕石からは手を引きましたが、
それももうずいぶん昔の話ですね。