地球の歴史
表紙に戻る

Essay■ 1_93 ハインリッヒ・イベント:IRD 4
Letter■ 涼しい話・歴史解明
Words ■ 暑い夏に負けないように


(2010.08.05)
  IRDはハインリッヒ・イベントによるものとされ、それは激しい温暖化の事件でした。歴史を調べていくと、地球の環境は激しく変動していることが分かってきました。現在、温暖化が危惧されていますが、解明への道は、地球史をよりよく解読し、そのメカニズムを解明することが、遠回りに見えるけれど、近道なのかもしれません。


Essay■ 1_93 ハインリッヒ・イベント:IRD 4

 北大西洋の深海底のコアから見つかった砂の層は、氷山からもたらされたということを、ハインリッヒは主張しました。
  この論文にいち早く注目したのは、アメリカのコロンビア大学のブロッカーでした。追試をするために、大学の保管庫にあるコアを調べたところ、似たようなIRDを再確認しました。ブロッカーは、このようなIRDをもたらすような出来事を発見者にちなんで、ハインリッヒ・イベントと呼びました。
  ブロッカーが調べた結果、ハインリッヒ・イベントは、新しい時代から順に、1万7000年前(H1)、2万5000年前(H2)、3万3000年前(H3)、3万9000年前(H4)、4万4000年前(H5)としました。年代は、ハインリッヒの求めたものとは違っていましたが、ほぼ1万年間隔でIRDがたまるイベントがあることを示しました。
  その後この研究は、コロンビア大学のボンドが引き継ぎ、より詳細なIRDの記載や研究が行われました。IDRはハドソン湾やその周辺から主にみつかり、他の地域では見つからないこと、IRDがハドソン湾周辺の大陸からもたらされたこと、砂の堆積後にかならず急激な温暖期が訪れていること、などを突き止めました。
  砂層は、氷山による砂(IRD)であることも多くの科学者も認めています。現在では、ハインリッヒ・イベントは氷河期の中で一時的に急激な温暖期に向かう過渡期の現象として砂の層ができることがわかっていました。そしてイベント自体は、500年程度の気候変動で、2、3年から10数年で急激な温暖化が起こっていることもわかってきました。
  最後の氷河期は、ヴュルム氷期(ウィスコンシン氷期とも呼ばれています)で、7万年前ころにはじまりましたが、2万年前に最寒冷期(最終氷期最盛期、Last Glacial Maximum、LGMの略されます)を迎えます。そして氷河期は、1万5000年前ころに終了し、現在も続く間氷期に移行します。
  氷河期とは、ずっと寒い時期が続くわけではなく、寒冷を基本としていますが、激しく気候が変動していた時期であることがわかってきました。最も寒い時期が、2000年ほど続き、あとは寒暖が激しく繰り返されたと考えられています。以前から知れていた有名な気候変動として、1万2000年前のヤンガードリアス期があります。これは、間氷期の温暖期の中で、寒冷化が起こったことが知られています。これも地球は激しい気候変動が起こっているという一例です。
  ハインリッヒが見つけたのは、ヤンガードリアス期とは逆で、寒冷期に急激な温暖化が起こった事件だったのです。では、その原因はなんだったのでしょうか。次回としましょう。


Letter■ 涼しい話・歴史解明 

・涼しい話・
もう8月です。
月日の流れるのは早いのですね。
今年は、梅雨が長く、
梅雨明けは暑く、激しい雨も降りました。
四国で暑さにやられそうです。
ただ、滞在しているところは
山里なので、夜は涼しいので
エアコンがない生活でも寝れるので助かります。
こんな暑い時には、氷河期の話は
涼しくていいのでしょうか。
なといっても、ハインリッヒ・イベントは、
氷山によってもたらされたIRDが由来となっています。
でも、急激な温暖化の話ですので、
涼しくはならないでしょうかね。

・歴史解明・
地球の歴史は、最近非常に詳しく読めるようになり、
いろいろ新しいことがわってきました。
特にここ数10万年の環境についての歴史は
非常に詳しく読まれてくるようになってきました。
しかし、その原因となると、
なかなか難しい問題で分からないことも多いようです。
その原因は、単純ではなく、
陸海空の要素が複雑に絡んでいるようです。
でも、その謎の解明が、
私たちの未来像を描くときの
大きな助けになるはずなのです。