地球の歴史
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Essay■ 1_89 新生代の再編の決着
Letter■ 再編・はやぶさ
Words ■ 大山鳴動して鼠一匹 


(2010.07.08)
  新生代の再編が1月に決着がつきました。それまのでいきさつは、このエッセイで何度か紹介しましたが、議論の末、一番混乱のないような、穏やかな再編に落ち着きました。その最終的な決着を遅ればせながら紹介します。

Essay■ 1_89 新生代の再編の決着 

 このエッセイで何度か取り上げましたが、時代区分の変更が国際地質科学連合(IUGS)によってなされました。新生代から第三紀という時代区分をなくし、パレオジン(Paleogene)とネオジン(Neogene)、第四紀(Quaternary)に区分し、第四紀の下限を258万年前とするという再編がされました。
  IUGSの提案を受けて、日本でもその対応が求められ、日本地質学会を中心にしていくつかの関連学会で、さまざまな検討、議論がされてきました。まず、区分を受け入れるかどうか、受け入れるとしたら日本語名称をどうするかなどの検討が求められました。
  その結果が、2010年1月22日に出ました。紹介しようと思いながら、昨年の暮れに時代区分の再編をシリーズで紹介したので、また同じような内容になるので、ついつい躊躇していたら、遅くなってしまいました。遅ればせながら、紹介します。
  第四紀の下限が258万年前まで古くなったことを受け、これまで新第三紀鮮新統になっていたジェラシアン期は、第四紀更新世前期に組み入れらることになりました。第四紀と新第三紀の境界が変更になりました。
  第四紀は、更新世(Pleistocene)と完新世(Holocene)に区分されているのは従来のままです。ただし、日本では、洪積世と沖積世が現在でも使われていたのですが、これが廃止され使用しないように決まりました。
  時代の名称については、パレオジンは古第三紀に、ネオジンは新第三紀にすることが正式に了承されました。これは従来から使われてきたもので、馴染みのあるもので、再編の影響が最小限になる配慮からでしょうか。
  当初は第三紀とともに、第四紀も廃止するという提案でした。蓋を開けてみると、結果的にはあまり大きな再編ではなかったことになりました。専門家だけの対応で済んでしまうことになるのでしょう。
  学問は進歩します。その結果、研究領域も細分化されていきます。今回のように体系が再編されると、研究者の社会では、混乱が起こります。その再編を研究テーマにしていたり、深く影響を受ける人は、それなりの対応が必要になり、反発する人もでてきます。
  IUGSののワーキングループからの提案があってから、このエッセイでも何度か紹介したのですが、長い議論、紆余曲折がありましたが、なんとか現状に至りました。各国が数年がかりでやっと再編を消化して受け入れることになりました。これによって、新生代の再編が終わることになります。
  再編が達成されれば、これからは定着がされていく時期になります。研究者はその再編に従います。論文を書くときや発表の場では、正式名称を使うことが義務付けられます。でも、社会に普及していくのには、時間がかかるでしょうね。でも、あまり影響はないのかもしれません。


Letter■ 再編・はやぶさ 

・再編・
今回の再編の結果は、地質学会の他、
日本学術会議のIUGS分科会とINQUA分科会、
日本第四紀学会との連名で報告されました。
同様の報告の例として、
冥王星が準惑星とされたときがありました。
冥王星のときは、話題になり、
多くの人がこのニュースを知り、
今では、冥王星が惑星でないということを知るようになりました。
そして教科書にも反映されているはずです。
このように広く周知ができると、
定着する時間は短くてすみます。
今回の新生代の再編は、ニュースにあまりならないため、
定着しにくいかもしれません。
第四紀とともに第三紀はずっと使われるかもしれません。
でも、内容的には研究者に周知徹底されれば、
とりあえずは混乱が生じない程度の
再編ですんだというべきなのかもしれません。

・はやぶさ・
前回まで紹介していた日本の宇宙探査シリーズで
「はやぶさ」を紹介しました。
その「はやぶさ」のカプセルから
小さな粒子がいくつか見つかった
というニュースがありました。
まだ、イトカワのものはどうから分かりませんが、
もし、そうだったらなかなか興味深いことになります。
違ったとしても、今回の一連の技術は
次回にきっと活かされるはずです。
期待して見守っていきたいと思います。