地球の歴史
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Essay■ 1_82 ちょっと前の最古:最古の岩石1
Letter■ 晩秋・自分で選んだ道
Words ■ 最古がずべていいわけではないが、気になることは確か



(2009.10.29)
  地球最古の岩石が見つかったという報告が、昨年9月に出されました。その最古の岩石には、どのような意味があるのかを考えていきます。なぜ、今頃になってといわれそうですが、じつは、私はこの論文を見逃していて、夏ごろになって気づいたからです。雑誌を探したら製本中で、昨日やっと製本から戻ってきた論文をみることができました。少々、賞味期限切れかもしれませんが、紹介しましょう。


Essay■ 1_82 ちょっと前の最古:最古の岩石1

 昨年(2008年9月26日付け)のサイエンス(Vol. 321, 1828-1831 p)という科学雑誌に、「冥王代の苦鉄質地殻へのネオディミウム142の証拠」(Neodymium-142 Evidence for Hadean Mafic Crust)という題名の論文が載りました。その報告によると、42.8(+0.53、-0.81)億年前の地殻の証拠がみつかり、それは地球最古のものであるということがわかったということです。
  今回の岩石について説明をする前に、このエッセイもでも最古の岩石や鉱物などを何度か取り上げましたが、今まで見つかっている最古の岩石と鉱物について紹介しましょう。
  地球最古の物質は、西オーストラリアの堆積岩の中から見つかっているジルコンという結晶です。そもそも堆積岩とは、別の岩石の砕かれたものが集まり固まったものです。堆積岩を構成する砂粒は、その堆積岩より古いものからできているはず。砂粒の中から、年代を測定ができて、その年代に意味をもっている対象としてジルコンという鉱物が選ばれました。
  ジルコンは、一度できるとなかなか壊れにくいという性質を持っています。さらに、結晶の中には、ウランという元素が少量ですが含まれています。ウランは放射性核種で、時間経過とともに鉛に変わっていきます。ウランから鉛に変化した量を測定することができれば、ジルコン一粒、あるいはその中の微小部分ででも、年代測定が可能になります。
  西オーストラリアの堆積岩の中のジルコンから、44億年前という年代が得られました。2001年のことでした。しかし、これは、もともとは石の一部であったジルコンが鉱物の粒として砂の中に紛れ込んだものです。ですから、残念ながら、もとの石の情報はほとんど持っていませんでした。
  地殻の情報を持っているのは岩石です。古い地殻のことを知りたければ、岩石を探す必要があります。最古の岩石は、北西カナダからみつかった片麻岩で40から40.3億年前のものです。1999年に報告されています。これは大陸地殻をつくっていた岩石の中から取り出したジルコンを、上と同じ方法で測定したものです。
  今まで述べてきた方法は、ジルコンという丈夫な結晶を見つけて、その中に残されているウラン−鉛の放射性壊変の記録を読むことで年代測定をするものです。この方法には、大きな弱点があります。それは、ジルコンを含む岩石、もしくはジルコンがないと、その手法が利用できないのです。
  ジルコンは、マグマからできる火成岩の中に形成される鉱物です。しかも、そのマグマは、珪酸が多い性質のものでなければなりません。珪酸が多いマグマからできた岩石は、灰色から白っぽい岩石になります。このような岩石は珪長質(felsic)や中性(intermediate)とよばれるタイプのもので、花崗岩や閃緑岩、トーナル岩とよばれる岩石となります。これらは、大陸地殻を構成する岩石です。
  大陸地殻には苦鉄質(mafic)の岩石も混じっています。さらに海洋地殻は苦鉄質の岩石からできています。珪酸の少ない苦鉄質マグマからできた岩石では、ジルコンはほとんどありませんので、その方法は使えません。一般に苦鉄質岩にも利用できる年代測定を利用すればいいのですが、それがなかなか難しいのです。その話は次回としましょう。


Letter■ 晩秋・自分で選んだ道 

・晩秋・
いよいよ10月も終わりです。
北海道では、木々が紅葉がそろそろ終わろうとしています。
ひと風吹くたびに、梢から落ち葉が舞い散ります。
もちろん木々の下には落ち葉が一杯になっています。
北海道の秋も、いよいよ終わろうとしています。
今年の夏は天候不順でしたので、
夏を楽しみきれなかったという思いがあり、
雪よ降るなと思ってしまいます。

・自分で選んだ道・
以前私は、大学院から研究所に所属していたときは、
年代測定を行っていました。
特に特別研究員としてウラン−鉛の年代測定をするために、
鉛の同位体測定のルーチン化に3年間励んでいました。
そのシステムをほぼ完成して
博物館へと転職したのですが、
それもずいぶん昔のような気がします。
当時、先端の研究をしていたと自負していたのですが、
それも遠い過去の話です。
今は、そのような先端の研究をする環境ではなく、
じっくりと時間をかけて地質現象を考えることに専念しています。
これも自分で選んだ道です。