地球の歴史
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Essay ■ 1_59 隕石の起源3:太陽系の創成を読む
Letter■ 隕石不足・卒業
Words ■ 春まだ浅く 


(2007.03.22)
  隕石に含まれている特殊な成分から、いろいろな情報が読み取られています。ほんの小さな石ころから、いろいろな情報が読み取られます。その一つに年齢があります。今回は隕石の年齢からわかることを紹介します。


Essay 1_59 隕石の起源3:太陽系の創成を読む

 「放射性核種」というものをご存知でしょうか。放射性同位体とも呼ばれています。放射性とは、物質や元素が、放射能をもっているものを指します。同じ元素でも、放射能を持つものと持たないものがあります。同じ元素でも、原子の質量の違いがあり、放射能を持つものと持たないものを、区別することができます。その質量の違いを区別したものを、核種あるいは同位体と呼んでいます。
  放射能とは、ある核種から、なんらかの粒子、あるいは電磁波を出して、別の核種に変わるという性質です。ひとつ放射性核種を観察していたとすると、いつ別の核種に変るかは、定かではありません。しかし、同じ核種がたくさん集まっていれば、種類によって、その変化する時間は決まっていることがわかっています。
  その変化する時間を利用すれば、その放射性核種を持っている物質ができてから、どれくらい時間が経過したかが測定できます。変化する時間は、半減期(もとの核種が半分になる時間)などによって、示されています。
  核種によって、壊れるスピードがわかっていますから、できて間もないものは、半減期の短い放射性核種を、できてから長い時間たつものは、長い半減期のものを利用すれば、物質ができてからの年齢測定ができます。
  さて、隕石です。隕石にも放射性核種が含まれています。その核種の量の測定から、隕石が形成されてからの経過時間がわかります。ただし、隕石の年齢は、非常に古いために、半減期の長い放射性核種を選んで、測定しなければなりません。
  ほとんどの隕石の年齢は、約45.5億年前というものになっています。測定結果は、非常によい一致をします。隕石の年齢の一致は、太陽系で最初にできた物質が隕石で、固体物質はすべて同時にできたということを示しています。
  しかし、隕石を構成する粒子を、詳しく調べていくと、粒子ごとに形成年齢が若干違っていました。ほんの少しですが、測定誤差以上の違いとして、高温でできる粒子ほど古く、低温の粒子ほど新らしいことがわかってきました。
  このような年齢の違いは、何を意味しているのでしょうか。太陽系ができた当初は、すべての粒子が、気体のガス状になってしまうほど、熱い状態であったということです。これを、原始太陽系ガスと呼んでいます。その後、太陽系全体が冷めてきて、ガスから結晶ができはじめます。熱かったものから冷めてできるのですから、最初に高温で形成される結晶ができ、その後低温でできる結晶が出てきています。
  隕石の構成物のほんの少しの測定値の差から、このような太陽系誕生の物語が読み取られるのです。
  このように隕石を調べれば、太陽系の創成期の様子を探ることができます。隕石が、太陽系のすべての素材となり、集積して天体が形成されたことになります。ですから、隕石から、太陽系の天体の起源を探ることもできるのです。さらに、そのような隕石が今も落ちてくるということは、太陽系の創成時代のまま現在まで保存されている場として。小惑星帯があることがわかります。
  隕石は、太陽系の起源を知っている証人なのです。



Letter 隕石不足・卒業 

・隕石不足・
隕石は、小さなひとかけらでも、非常に重要な意味を持ちます。
そして、読む側の能力さえがあれば、同じ隕石からでも、
いろいろな情報を読み取ることができます。
例えば、宇宙空間で形成される放射性核種で、
非常に半減期の短いものがあります。
そのような核種は、隕石が地球に落下してすぐに
測定しなければ、少なくて測定できなくなってしまいます。
しかし、その核種がなくなっても、
今度は半減期の長い核種を利用して
別の情報を読み取ることができます。
多数の核種があるために、一つの隕石からも
いろいろな情報を読み取ることができるのです。
ただ、問題は、多くの分析では、隕石を砕いたり、
溶かしてしまうことです。
そうなれば、その隕石から、他の情報を読み取ることはできません。
しかし、隕石は、今も落ちてきますし、
今まで探さなかったところから、大量に見つかったりもしています。
ですから、とりあえずは、隕石が不足するということはないはずです。
不足するころには、小惑星帯での探査や試料回収などが
行われているかもしれませんね。

・卒業・
現在、卒業式があちこちで行われています。
次男の幼稚園は15日に、長男の小学校は18日に、
私の大学は23日に行われます。
そして、今週で小・中・高校も終業となります。
いよいよ区切りの季節となりました。
新たな場、環境に向けて、多くの人たちが旅立ちます。
残っている人も、新しい人たちを迎えることになります。
そんな4月には、桜が似合います。
でも、北海道の4月はまだ春浅く、
桜は新天地になれたころとなります。