地球の歴史
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Essay ■ 1_57 隕石の起源1:言葉の意味
Letter■ 隕石の起源シリーズ・同義反復・暖冬
Words ■ もう春はすぐそこに 


(2007.03.08)
  隕石という言葉を何気なく使っていますが、隕石の言葉の意味を知っている人は少ないと思います。隕石の意味を探っていきましょう。


Essay 1_57 隕石の起源1:言葉の意味

 隕石の落下は、稀な出来事です。でも、人の住んでいるところに落ちれば非常に目立つ大事件となります。これは、洋の東西を問わずいえることです。
  隕石は英語で、meteorite(メテオライト)といいます。meteoriteは1824年にはじめて、「流星」あるいは「流れ星」(meteoroid、あるいはmeteorといいます)の同義語として使われました。やがて、落ちてきた流星として「隕石」の意味にも使われるようになりました。流星を表す語であるmeteorは、ギリシア語の「空中のもの」という意味のmeteorosから由来しています。ですから、西洋では隕石は、流星が落ちてきたという意味から由来しています。
  西洋において、隕石落下の記述は、それほど古いものはありません。旧約聖書に書かれているものに、戦い時「主は天から彼らの上に大石を降らし、(中略)多くの人々が死んだ」という記述が「ヨシュア記」10章にあります。これは、大きな隕石が落ちて、戦場に落ちて被害を与えたことを意味しているのかもしれません。しかし、史実かどうかは定かではありません。
  中国には、確実な史実をたくさん用いて経義を説いている「春秋左氏伝」というものがあります。その史実の中に、「隕星」(いんせい)と呼ばれている隕石が登場します。
  「春秋左氏伝」とは、春秋時代(紀元前500年頃)に書かれたものが、前漢末(紀元元年頃)にまとめられたものです。日本にも古くから伝わり、奈良時代(757年)の基本法令として、大宝律令に続く養老律令が定められました。その養老律令の中で、「春秋左氏伝」は大経の一つとされていました。ですから、東洋では、隕石という存在は、非常に古くから知られ、隕石が起こした事件も、史実として記録されてきたのです。
  現在では、隕石という言葉は、誰もが耳に、その意味するところを知っています。しかし、「隕」という漢字は、隕石という言葉以外で、目にすることはほとんどありません。ですから、「隕」という漢字に、訓読みがあることや、その読み方を知っている人は、ほとんどいないでしょう。
  「漢字源」によりますと、「隕」の訓読みでは、「おちる」と「おとす」と読みます。「隕」とは、「ぽとんところげおちる」とか「こぼれおちる」という意味です。「隕石」とは、漢字の意味を理解すれば、「ぽとんところげおちてきたも石」という意味だとすぐに分かります。隕石を表現するものとして、素晴らしい命名ではないでしょうか。
  隕石が落ちれば大事件ですが、その事件の記録と共に、事件の元となった隕石が保管さていることは非常に稀です。日本は、国土が狭いため、落下した隕石の数はそれほど多くないのですが、神社やお寺などに記録と共に保管されていることがあります。現在、隕石と認定されているものは、50個ほどあります。
  日本の「続日本紀」に、764年(天平宝字8年)9月18日に「是夜有星、落于押勝臥屋之上」という記述があります。これは、恵美押勝の乱の頃「夜、押勝の臥屋に星が落ちた」という意味です。これは日本最古の隕石の記録となっていますが、その隕石は残されていません。
  福岡県直方市に861年5月19日(貞観3年4月7日)に落下した隕石は、その記録が残され、なおかつ隕石自体も須賀神社に保存されていました。直方隕石と呼ばれていて、472gの重さのものです。これは、記録のあるものとしては、世界最古の隕石となります。
  直方隕石が見つかるまで、世界最古の隕石(127kg)は、1492年11月7日にアルザスのエンシスハイム(Ensisheim)に落下したものでしたから、一気に600年以上も記録を塗り替えたのです。



Letter 隕石の起源シリーズ・同義反復・暖冬 

・隕石の起源シリーズ・
今回から隕石の起源シリーズをはじめます。
以前にもシリーズではないのですが、
「地球の歴史」の項では隕石を何度か扱ってきました。
しかし、今回は隕石の起源にまつわる話を、
いろいろしていこうと考えています。
お楽しみ。

・同義反復・
本文でも述べましたが、隕石の「隕」とは「おちる」という意味ですから、
「隕石の落下」は「馬から落馬」と同じような使い方です。
つまり同義反復です。
現在では、隕石は岩石のタイプを示す名称となっていますから、
今では、「隕石の落下」という言葉は普通に使われます。
しかし、もとを正せば、「隕」という文字が、
日常的には隕石にしか使われないため、
その意味が忘れ去られたためかもしれません。
ですから、誰も同義反復であることに気づかないのかもしれませんね。

・暖冬・
3月の声を聞いてから、北海道は一気に雪解けが始まりました。
今年は全国的に暖冬ですが、北海道も雪が少なく、
除雪費用もあちこちの市町村で余っているようです。
しかし、財政の再建を多くの自治体では取り組んでいるので、
残った除雪には翌年の一般財政に組み込まれるのでしょうか。
本当は、昨年のようにドカ雪のようなときに備えて、
繰り越せればいいのですが、
単年度会計を基本とする自治体では難しいのでしょうか。