地球の歴史
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Essay ■ 1_26 隕石の年代
Letter■ アイディアが必要・2週間先の予約
Words ■ アイディアが問題である。でもアイディアが出てこない 


(2003年9月11日)
 隕石から、地球を含めた惑星や太陽系のできた頃のことが探られています。では、隕石に書き込まれた事件を、どのようにして読まれるのでしょうか。


Essay

 隕石の年代測定は、主に同位体組成というものを用いておこないます。元素の中には、質量の違うものがあります。そのような質量の違うものを同位体といいます。元素によって、同位体がひとつだったり、たくさんあったりします。
 また、同位体の中には、安定に存在できるものと、不安定なものがあります。不安定な同位体は、ある時間がくると、他の安定な同位体に変化するものがあります。このような不安定な同位体を放射性同位体といいます。多くの放射性同位体は、比較的短い時間で壊れてしまいますが、中には長い時間をかけて、ゆっくりと壊れていくものがあります。
 このような放射性同位体は、年代測定に利用できます。その壊れるスピードによって、どのような年代のものに利用できるかが決まります。
 隕石のような、何十億年という長い時間を経てきた古いものには、壊れるスピードの遅い放射性同位体をつかいます。ルビジウム(87Rb)、ランタン(138La)、サマリウム(147Sm)、ルテシウ(176Lu)、レニウム(187Re)、ウラン(238U、135U)、トリウム(232Th)が用いられています。
 原理は、簡単です。現在の放射性同位体(親核種)と、壊れてきた安定同位体(娘核種)の値を求めます。これでは、年代(変数)を求めることはできません。なぜなら、もともとあった量(変数)がわからないからです。一つの式で2つの変数は求めることはできません。少なくとも2個以上の式が必要です。
 この変数を求めるには、もう一つ別のものを分析をすればいいのです。でも、条件があります。同じ時できたものであることと、もともとの放射性同位体の量の違うものを2つ以上集めれなければならないことです。2つの測定値(式)があれば、もともとの量がわからなくても、年代を決めることができます。もちろん、分析するデータは多いほうが精度が上がります。
 岩石でいえば、同じマグマからできたいくつかの鉱物を分析することになります。地球の石なら、小さな鉱物でもたくさん集めることができます。でも隕石の場合はそうはいきません。隕石は、地球の岩石にたとえると一種の堆積岩のようなものです。いろいろな岩石の粒が混じっています。
 隕石で岩石の粒に当たるものは、コンドリュールというものです。せいぜい数ミリメートルしかないものです。それは、隕石の材料物質が溶けたときに、無重力状態ではマグマが球状になります。それが冷めてくると球状のまま、いくつかの鉱物ができて固まるものがあります。それがコンドリュールです。ですから、先ほどの年代測定を正確にするには、一つのコンドリュールの中の鉱物を分けて、分析する必要があります。そんな技術が、今やあります。測定装置もさることながら、根気よく小さな粒を分けなければなりません。
 もうひとつの方法として、ウランを使う方法があります。ウランには、上で示したように、ゆっくりと壊れる放射性同位体が2つあります。この2つ同位体セットを同時に測定してしまえば、一回の分析で測定ができます。この測定は、分析したいところに粒子をあてて、そこを掘り返して、原子レベルにばらばらにしてしまいます。それを測定装置に直接導いて測定します。
 この方法による測定では、数十ミクロンメートルの部分(試料)があれば、年代測定ができます。もちろん、精度をあげるには、多数の分析をしなければなりません。そしてなによりも、ウランがたくさん含まれている鉱物でなければなりません。
 このようないくつもの方法で隕石が測定されています。その結果、原始的と呼ばれる隕石の年代は、どれも45.6億年前という時代が得られています。もちろん、詳細な年代測定なので、もっといろいろなことがわかっていますが、それは、別の機会にしましょう。



Letter アイディアが必要・2週間先の予約

・アイディアが必要・
地球をつくった材料は隕石から探ります。
でも、いまやその材料は、地球でさまざまなものに姿を変えています。
地球をつくった材料はもはや手に入りません。
でも、いまも地球を太らせている地球の材料物質の名残なら
手に入れることができます。
それが、今手に入る隕石です。
最近地球に落ちてきた材料物質です。
ですから、非常に貴重な試料といえます。
地球に近づく小惑星までロケットを飛ばして、
試料を持って帰るという計画があります。
ロケットを打ち上げるには、たくさんのお金と人材をつぎ込みます。
でも、隕石は、落ちているのを拾うだけです。
隕石は貴重ですが、労せずして手に入ります。
また、南極や砂漠から大量の隕石が発見されています。
それを利用すれば、研究者は材料には困りません。
あとは、隕石からどんな情報を読むかというアイディアのほうが大切です。
こればかりは、いくらお金をかけても、でてきません。
むしろお金がなくて、アイディアだけで勝負している研究者のほうが
このような研究には向いているかもしれませんね。

・2週間先の予約・
先週につづいて、今週も留守中での送信です。
まぐまぐが2週間先まで予約できるようになって
本当に助かりました。
これは、毎号欠かさず出せるために、非常に役立っています。
私のように調査に出ることが多いものとっては、助かります。
このメールマガジンは、別に毎週出すことが目標ではありません。
でも、毎週読んでくれているはずの「不特定のひとりの読者」に向けて、
発行しているので、楽しみにしている読者を失望さえることがつらいのです。
それが回避できることが助かります。
以前は、メールマガジンのために旅行の日程も調整したことがあります。
でも、それが不要になりました。
がんばって書いて、続けています。
御愛読ありがとうございます。