地球の歴史
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1_18 石鉄隕石の起源


(2002年12月12日)
 隕石には、石質隕石と、鉄隕石、石鉄隕石の3種類があるといいました。そのうち、前回は、不思議な隕石、石鉄隕石について紹介しました。今回、その石質隕石の起源を、もう少し、詳しく探っていきましょう。


 前回、隕石は、地球外から飛んできといいました。となると、隕石は、地球外のどこで、どのようにしてできたのかが知りたくなります。前回は石鉄隕石について紹介しましたが、この石質隕石を材料にして、もう少し詳しく、その起源をみていきましょう。
 石鉄隕石は、太陽系で一番最初にできた隕石(石質隕石のある種のタイプ)とは、違っています。もし、一番最初にできたとしたら、宇宙空間で形成されていますから、そのような証拠が必要です。しかし、いまのところ見つかっていませんし、次に述べるように、特殊な環境を考えなければ、この石のような鉱物の組み合わせや、つくり(組織といいます)は、つくることができないのです。
 石質隕石は、材料となる物質から一度溶けたものからできました。それは、原始的と考えられる隕石(別のエッセイで紹介する予定です)が、一番古く、石鉄隕石は、やや若い年代ものを含んでいます。また、原始的隕石は、溶けた経験がないのですが、石鉄隕石は、溶けた経験を持ちます。このようなことから、石鉄隕石のできたところは、特殊な場を考えなければならないようです。
 金属鉄と鉱物が、一度溶けた(分化したといいます)経験をもったものからできたとすると、その溶けて分化した場所としては、比重の違う鉄とかんらん石が混じり得るようなところでなければなりません。そのような場所として、無重力空間、つまり、宇宙空間が考えられます。
 もし、無重力空間でできたなら、鉄もかんらん石も丸い粒(コンドリュールとよばれます)のような球状をしてるはずです。重力のないところでは、液体はすべて球になります。ところが、この石鉄隕石は、かんらん石は、鉱物自身が持っている形(自形といいます)をしていて、その隙間を金属の鉄が埋めています(他形といいます)。
 このような組織は、普通の岩石では、最初にかんらん石が結晶化し、後で鉄が固まったと考えるべきです。しかし、金属鉄とかんらん石は、共存できませんし、結晶化する温度(晶出温度とか凝固点といいます)も、鉄のほうが高温、つまり、先に結晶化します。ですから、全く違う組織となるべきです。
 ですから、石鉄隕石が、無重力空間での結晶化は考えにくいのです。
 石鉄隕石の結晶の組み合わせや組織は、もともとありえないものなのです。しかし、私の机の中には、石鉄隕石は存在します。このようなありえないものをつくるには、めったにありえないけれど、現実としてきっと存在する場が必要になります。それが、起こりうる場として、マントルと核の境界部が想定されています。
 たとえば、地球には金属鉄でできた核と、かんらん石を主とする岩石からなるマントルがあります。両者の関係は、石質隕石でみた関係です。地球では、層として、分離されています。そのような層境界では、地球規模で見れば、明瞭に別れているのですが、人間のサイズで、細かく見れば、石鉄隕石のようなものが、どうしても境界部にはできてしまうのです。
 このようなことから、石鉄隕石が、惑星のマントルと核の境界からできたものと考えられているのです。それも、今はなき、惑星です。その原始の惑星は、壊れてしまったのです。だって、私の机の中にそのかけらがあるのですから。