地球の歴史
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1_6 最古の鉱物のもつ意味


アフリカ産のジルコンの結晶

(2001年2月8日)
 前回の最古の鉱物の発見から、小さな物質とはいえ、鉱物にはさまざまな情報が埋め込まれていることがわかります。では、ジルコンという鉱物から、どのようなことがわかるのか説明しましょう。たった数mm程度の小さな鉱物ですが、それが物語る地球誕生のストーリーは壮大です。


 ジルコンは、元素Zrの名称ジルコニウムの語源となっています。それは、鉱物のジルコンには成分にZrが含まれているからです。もともとジルコンという鉱物は、宝石として古くから知られていたのです。1789年にセイロン産のジルコンからジルコニウムが発見されました。
 ジルコンには、その他の成分として珪素と酸素が含まれています。その化学式(構造式といいます)は、ZrSiO4です。ジルコンを形成するマグマは、充分な珪酸(SiO2)を含んでいるものです。岩石(火成岩)の名前でいえば、花崗岩です。つまり、ジルコンという鉱物は、花崗岩の中に含まれている鉱物であったといえるわけです。花崗岩は大陸を構成している岩石です。ですから、ネイチャーのカバータイトルに「大陸の破片」と書かれていたのです。
 ジルコンを構成する元素である酸素の同位体が、さらに重要な情報をもたらしました。ジルコンの酸素同位体からマグマの酸素同位体組成を推定することが可能です。マグマの酸素同位体組成から、マグマをもたらした物質(起源物質と呼びます)が、堆積岩であったと推定されました。堆積岩が存在したということは、その当時、地球表面に海があったことを示しています。
 この酸素同位体から堆積岩にいたる仮説は、議論を呼ぶところであると思いますが、そのような仮説は、論理的には可能で、ありえる話です。
 このジルコン発見から、地球誕生の物語が書き変わります。地球は太陽や他惑星と一緒に45億7000万年前に形成され始めました。44億7000万年前にはほぼ現在の大きさになりました。最初の1億年間に地球の中心部には、核が形成され、外側はマグマオーシャンにおおわれていました。地球形成から7000万年の間にマグマオーシャンの表層は冷え、水が表層に形成されました。それ以降、地球表面にはずっと海が存在し続けていたのです。