地球の歴史
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1_5 「最古のもの」より古いもの

(2001年2月1日)
 前回のエッセイで地球最古の物質は、鉱物で、約42億年前のものであるということを紹介しました。しかし、先週、届いたネイチャー(Nature)という科学雑誌の2001年1月11日号で、「最古のもの」よりもっと古い鉱物が発見されたと伝えられました。その内容を紹介します。


 ネイチャーでは、表紙の写真と「古い大陸からの破片」というカバータイトルになっていました。ネイチャーは、科学の世界では非常に権威のある雑誌です。その表紙を飾るほど重大なニュースだったのです。表紙に関連した2編の論文とニュース記事が載っていました。1編は42.8億年前に海の証拠があったいう論文で、他方は44億年前の鉱物の発見の論文でした。両方とも重大な論文でした。ニュース記事はその重要さを解説したものした。
 最古の海の証拠は、それまで最古の鉱物(約42億年前)が見つかっていた西オーストラリアのジャックヒルというところ以外から見つかりました。西オーストラリアのマーチソン地方で、この地域の地層には、約30億年前の珪岩と呼ばれる堆積岩があります。珪岩とはほとんど石英からできている岩石です。その珪岩の中のジルコンといいう鉱物の年代が、42.8億年前で「最古のもの」でした。ジャックヒルの最古の鉱物の年代は42億7600万年前でした。マーチソンの鉱物は、若干ですが古くなりました。それよりも大事なことは、39.1億年前から42.8億年前のジルコンの酸素同位体組成から、堆積岩からできたマグマの可能性が指摘されたことです。堆積岩が存在するということは、地表付近の水があったと考えられるわけです。42億7600万年前に海の証拠が見つかったのです。
 もう一つの論文は、もっと古い鉱物の発見です。最古の鉱物が発見された地域は、今まで最古の鉱物が見つかっていたジャックヒルです。同じ堆積岩の中に最古の鉱物片が見つかったのです。その年代は、44億0400万年前でした。さらに、マーチソンのものほど顕著には現れていませんが、海の存在の可能性を持っていました。
 鉱物は、ジルコンと呼ばれるもので、珪酸成分の多いマグマからできたことがわかっています。珪酸成分の多いマグマは、花崗岩(かこがん)と呼ばれる岩石になります。花崗岩は、よく目にする石材で、御影石と呼ばれています。花崗岩は大陸を構成する主要な岩石です。ですから、ジルコンという鉱物から、ネイチャーの表紙のキャッチコピーが「古い大陸の破片」となったのです。このジルコンというちっぽけな鉱物が、最古の記録を1億3000万年も古い記録に塗り替えたのです。


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